ここにきて、かつてない脅威としての感染症リスクから従業員を守り、拡大させないための重要な施策としてテレワークを捉え、その緊急的な実施に向けた対応を迫られている企業が急増している。日本では、既にテレワークを実施している企業があるものの、あえて実施してこなかった企業や、何らかの理由で実施できない企業も見受けられる。問題は、対応を求められても、何から始めたらよいか分からない企業が多数存在している点にあるとしている。
ガートナーは、「テレワークについて何を検討すべきか」について悩んでいる企業に対し、テレワークを推進する際の論点として検討すべきポイントを、以下の5W1Hを軸に解説している。
1. なぜテレワークを行うのか (Why)
検討を進める上では、「なぜテレワークを行うのか」という目的が重要な論点となる。すなわち、今回のような新型コロナウイルス感染症対策としての「緊急的な暫定措置」なのか、あるいは働き方改革などの「恒久的措置」なのかを考える必要があるとしている。
緊急的な暫定措置としてテレワークを導入する場合は、いかに早期に「可能な限り外出の抑制措置を講じ、また実行できるか」がポイントとなる。そのため、最低限の仕事ができる状態にどう早期に持っていくかが問われている。
また、テレワークを暫定措置から恒久的措置に移行する際には、さまざまな留意すべきポイントがある。マインドセット (考え方)、アプローチ、振る舞いといった観点から、あらかじめ留意しておいた方がよい点としては、例えば、完璧を求めすぎないことや、無駄な管理を減らしていくことが挙げられる。
2. いつテレワークを行うのか (When)
テレワークを実施するタイミングと「人、モノ、カネ」の有無について、早期に社内の関係各位の共通認識を得ることが求められる。いつ行うかは、テレワークに速やかに移行する場合と、段階を踏む場合の2つのポイントに分けて考えられる。緊急時には、基本的にできるだけすべての人を対象に速やかに移行。段階的に行う場合は、移行のタイムフレームと誰がテレワークを行うかを整理するところから始めるとよい。
3. どこでテレワークを行うのか (Where)
今回の感染症対策のように、外出の抑制を意図するものについては、基本的に自宅でのテレワークが前提となる。特に、不特定多数の人が集まるような場所での仕事は、感染症対策としては原則「禁止」とすべき。
一方で、働き方改革の一環として今後取り組んでいく場合は、「自宅では仕事ができない」といった事情を考慮して、自宅だけでなく、サテライト・オフィスやカフェなどでの仕事を認めるケースも考えられる。その場合は、無料のWi-Fi接続やPC画面ののぞき見など、予期せぬセキュリティ上の問題が発生する可能性がある点に留意し、対策を講じるべき。
4. 誰がテレワークを行うのか (Who)
今回のケースは緊急事態のため、スピード感を持って進めることが感染拡大を防ぐ上では重要。しかし、「何とかなるだろう」と全社で一気に進めても、実際には業務が滞る恐れもある。オフィス・ワーカーの業務はさまざまな種類があり、さまざまな要素から成り立っているため、対象者のグルーピングを行い、優先順位を決定することが重要。緊急時は会社として従業員を守るという観点で実施されるため経営判断となるが、実施範囲によって、早急に準備すべきインフラ環境が変わってくる可能性がある。
恒久的措置では、特別な事情がある特定の従業員に限定するのか、あるいはその他の一般従業員も含めるのかなど、誰を対象とするのかについて検討を行う。仕事の内容によってテレワークが難しい従業員もいるが、将来的な働き方改革への取り組みでは、何らかの形で実施できないかを、あらゆる従業員を対象に検討しておくべき。また、パートタイムをはじめとする非正規雇用者への対応なども、会社として議論しておくことが必要。
5. 何を使用してテレワークを行うのか (What)
テレワークを導入するに当たって、何を使用して行うのかを考える必要がある。緊急対応であれば、使い慣れたスマートフォン、PC、メールなどの最低限のインフラやアプリケーションでスタートし、その後、必要なツールを追加していくというアプローチが採用される (図1参照)。
テレワークにおけるテクノロジとサービスの選択肢は多様化している。緊急措置と恒久措置では、求められるものが異なる可能性がある。例えば、緊急措置としてスマートフォンを利用しても、恒久措置としてはノートPCが必要であったり、コミュニケーション・ツールなどに関しても、メールだけでなく、チャット・ツールや会議ツールが必要になってきたりするケースがある。こうしたツールは日頃からその利用に慣れておかなくてはならない。勤怠管理や経費精算といった日常業務に必要なツールを急に入れ替えることは困難だが、それらがオンプレミスでないと動かないために会社に来る必要が生じる場合は、これを機に見直すことも重要。
6. どのように実施するか (How)
テレワークの実施に当たり、どう進めるのかを決める必要がある。緊急時には全社で一斉に適用するが、恒久的には段階的な実施を検討。段階的な進め方では、例えば、まず試験的に週1回の実施からスタートし、問題点を整理した上で、週2~3回に拡大していくといったアプローチを検討する。
テレワークを実施した場合は、さまざまな問題が発生することが考えられる。こうした問題を一括して把握することが企業には求められるため、テレワークのサポート・センターなどの併設も併せて検討するのが望ましい。
新型コロナウイルス感染症対策として、少なくともこれから数カ月は、緊急的な暫定措置としてのテレワークを中心に議論されるケースが多くなるが、時間が経つにつれて、恒久的措置としてのテレワークの議論に移行していく可能性がある。その際に検討すべきポイントの例としては、以下が挙げられる。
- 紙文化の撤廃 (ペーパーレス)
- 勤怠管理
- サポート体制/トレーニング
- 費用の個人負担/会社負担
- 仕事の評価