気候変動はもはや漠然とした脅威ではなく、さまざまな分野で既に影響を及ぼしており、世界の経営者の80%以上が気候変動を懸念していることが示された。気候変動問題への認知向上や具体的な働きかけや活動が世界で広がる中で、経営者は懸念を示しながらも、手遅れになる前に行動起こすことで最悪の状況を抑え込むことができると期待も広がっている。この調査では、59%の経営者が気候変動に関して世界は転換点にあると考えており、63%の経営者が「すぐにアクションを起こせば、気候変動の最悪の影響を抑え込み、より良い未来に向けて進むことができる」という見解に同意している(図表1)。
この調査では、COVID-19や景気低迷により、サステナビリティに対する取り組みに一時的な停滞が見られたものの、「取り組みを完全にやめる」と回答した企業が1社もないことも示された。
現在企業が注力しているアクションの上位3つは、「公益の観点での取り組み」(49%)、「サステナビリティ基準の順守に対するサプライヤーへの働きかけ」(48%)、「よりサステナブルな原材料の利用」(46%)であり、企業は気候変動に対して、実際的な対策の実行に軸足を移しつつあることがわかった(図表2)。このように、約半数の企業が幅広い社会の便益に資する自社の立場を明確に示しながら、経営層の教育も含めた全社的な活動へと舵を切っており、自社を超えた取引先等にも行動変化を働きかけるとともに、従業員のアクティビズムのサポートもするようになってきている。
経営者が、今後、気候変動の取り組みを加速させていく動機を見ると、「投資家や株主」(38%)が最多の回答を得ており、主にステークホルダーからの圧力によって動かされていることが分かる。これは、昨年の調査から5ポイント上昇しており、顕著な兆候を示している。それだけでなく、「従業員や社外の活動家からの要求」(35%)も動機の2位となっており、アクティビズムの役割も存在感を増している。さらに、「業務や財務への直接的なマイナスの影響」(31%)も主要な動機の1つであり、気候変動が自社の中核業務にどのように影響を与えるのかについて企業は認識を深めている(図表3)。このように多面的な課題認識の下、経営者が気候変動に対応する必然性は高まっており、企業は経営アジェンダとして率先して取り組むことが求められてきている。
この調査は、気候変動への対応は企業を含む社会全般が連携して行うことの重要性も示している。自社が採り入れると仮定している。最も地球環境のサステナビリティを前進させるアクションについての質問では、最多回答を「より良い他者教育、気候変動に関する研究の強化」(35%)が得ており、次に4分の1の経営者が「アドボカシーや公益に関する取り組みへの関与」(24%)を挙げ、「関連組織やプログラムへの金銭的支援」(16%)、「個人の行動変容の奨励と優先付け」(3%)を大きく上回っている。変化を牽引していくのは、金銭的支援や個人の行動変容よりも、共同のアクションと関与が最も重要であると経営者が考えていることが明らかになった。また、2021年11月に開催予定の国連機構変動枠組条約締約国会議(COP26)へ、過半数を超える企業が参加を計画しており、各企業の個別のアクションという枠を超えて、公益に資する共同アクションとして社会変革を起こしていく重要性を世界中の経営者が感じている。