2020年のIT支出は、高い成長率を示した2019年からの反動に加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、2019年に比べて2.7%減少した。感染拡大による最初の緊急事態宣言が発令されてから1年以上が経過し、日本の企業や組織でもニュー・ノーマルへの対応が進み、一部の業種では業績回復の兆しも見られる。しかし、流行の長期化を背景に、多くの企業が当面は手元資金の確保を優先するため、IT投資の回復が本格化するのは2021年秋以降になるという。そのため、2021年のIT支出は前年を上回ると予測されるものの、2020年の減少分を取り戻すまでには至らず、支出規模が2019年の水準に戻るのは2022年以降になる見通しだとしている。
さらに、産業によって業績の明暗が分かれており、その影響はIT支出にも表れている。2020年に特に深刻な影響を受けた業種は運輸、小売、製造/天然資源であり、同年の成長率はそれぞれ-12.0%、-11.3%、-9.0%だった。これらの業種については、2021年の成長率も-0.4%、1.5%、1.6%と、市場全体を下回ると予測されている。一方で、2020年の成長率が最も高かった教育(6.8%)、政府官公庁/地方自治体(4.3%)は、2021年もそれぞれ6.8%、6.1%と高い成長が見込まれている。これらに続くのが電力/ガス/水道(5.0%)、保険(3.4%)、銀行/証券(3.3%)となっている。
日本の業種別IT支出予測(単位:億円)
出典:Gartner(2021年5月)
日本のIT支出の最も大きな割合(22%)を占める製造/天然資源の成長率は、2020年の-9.0%から2021年には1.6%とプラスに転じる見通しだが、引き続き市場全体の成長率を下回ると予測されている。日用品やヘルスケア用品を除く製品需要の低迷からの回復の兆しが一部で見られるものの、半導体不足などのサプライチェーンの混乱が足かせとなり、依然として先行き不透明な経営状況が続いているという。そのため、コスト最適化と、短期的に高い効果を得られる案件以外は引き続き先送りされる傾向にある。投資を再開した一部の企業は、IT投資の優先順位をパンデミックへの対応と回復から生産性とビジネスの成長へとシフトし、競争力を高めている。ライフサイクル全体での製品やサービスの強化、工場/生産/プロセスの自動化、サプライチェーンの再編、持続可能性などが、IT投資の重点分野として挙げられる。