連載・コラム 不確実な時代のビジョン・戦略策定手法

シナリオをアウトプットに落とし込む“4つのステップ”──戦略・ビジョン策定へのシナリオ活用

第3回

 前回は、シナリオプランニングを進める前の実施準備、そして、「未来に関する情報収集」「ドライビングフォース特定」と、実践における最初の2ステップを紹介しました。今回は、「ドライビングフォースの分類」「未来を分かつ2軸の設定」「シナリオの作成」「アウトプットの作り込み」という後半の4ステップを解説します。また、戦略やビジョン策定へのシナリオ活用についても説明しています。

[公開日]

[著] 後藤 拓也

[タグ] ビジョン シナリオプランニング VUCA 戦略策定

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ドライビングフォースの分類と2軸の設定

ステップ3:ドライビングフォースの分類

 シナリオプランニングのテーマに大きな影響を与えうるドライビングフォース(未来の駆動要因)を特定した後は、議論を通じてそれらを分類していくステップに移行します。その際、不確実性とインパクトの2軸からなるフレームを使用することが有効です(図1)。

図1:不確実性×インパクトによる分類フレーム図1:不確実性×インパクトによる分類フレーム

 横軸である「不確実性」は、シナリオプランニングで頻繁に使われる独特な表現ですが、未来のある時点での物事の起こる/起こらない、程度など状態を一つに特定できるかを表しています。たとえば、日本の総人口数や高齢化率などの人口動態に関する未来は、一定程度の予測が可能な典型で、不確実性が低い(=未来のある時点での状態が、高い確度で見通せる)と分類できることが多いでしょう。また、縦軸の「インパクト」はテーマに対する影響度を意味します。インパクトを考える際には、不確実性とは切り離して考えます。つまり、仮にある物事が起きた場合、それがテーマで設定した未来にどの程度影響を与えるかを考察することになります。

 このステップを進める上で重要なことは、策定チーム内での質の高い議論です。「なんとなく」でドライビングフォースを分類していくのではなく、各メンバーが「なぜそう考えるのか」に着目して、突っ込んだ議論を展開することが必要となります。たとえば、AIが進化することについての不確実性は低くても、AIが普及することについては不確実性が高いと考えられ、それらを区別することが適切な場合もあります。すべてのドライビングフォースを「不確実性×インパクト」のフレーム上にマッピングすることで、このステップが完了します。

ステップ4:未来を分かつ2軸の設定

 分類後のドライビングフォースは、3つの領域に分けて取り扱います(図2)。まず、テーマで掲げた未来に大きな影響を与えるものではないとして、インパクトが小さい領域を検討のスコープ外に置きます。また、インパクトが大きく不確実性が低い領域(左上領域)は、シナリオの2軸としては採用せず、すべての未来シナリオに前提として組み込んでいきます。そして、インパクトが大きく不確実性が高い領域(右上領域)から、未来の分岐である2軸を選定してくことになります。

図2:分類後のドライビングフォースの活用法図2:分類後のドライビングフォースの活用法

 策定チームはまず2軸案を複数作成します。その際に重要なことが“軸の独立性”です。ある軸が起こる/起こらないに影響を受けづらいと考えられる別軸を設定しなければ、2軸がうまく機能しなくなってしまいます。独立した2軸を正しく選ぶことで、必然的に4つの異なる領域が生まれます(図3)。それぞれの領域は、起こりうる異なる未来を意味します。なお、軸を決定していく際には、2軸だけで良し悪しを判断するのではなく、実際に4つのシナリオがどんな姿になるかを議論しながら検討を進めることが有効です。

図3:2軸と4つのシナリオのイメージ図3:2軸と4つのシナリオのイメージ

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