デジタル変革時代における「知財」の問題
産業がITを取り入れることは、時代の流れとして必然である。しかしITの進化のスピードは目覚ましい。産業がITを取り入れようとしたところで、その時すでにITが次のフェーズに進んでいたら意味がない。取り残されないためにも、ITの現状について知っておくべき必要がある。
「農業ITの将来とスマートアグリのグローバル展開」というテーマで行われた本フォーラムにて遠藤氏が語ったのは「現在進行形のIT」だ。ここに農業のような第一次産業がITを取り組むときに意識すべきヒントがある。
2007年にiPhoneが発売されて以来、人々のライフスタイルは劇的に変化した。遠藤氏によれば、20代前半の女性は起きている時間の5分の1をスマホに費やしている。さらに、米国ではタブレット端末はすでに現在の需要に対しては飽和されつつあり、全家庭の50%に近い家庭がタブレット端末を所有していることが、リサーチによって明らかであるという。
このようなデバイスの普及・浸透にともない、デジタルコンテンツにおける「知財」の問題は深刻化している。不正コピーやコンテンツ盗用といった問題だ。「知財」は、もはや法律でコントロールするのは難しくなって来ている。
そこで、企業によっては独自の「知財」への取り組みがなされている。昨年AppleがリリースしたiOS8では家族6人までならアカウントを共有することなく、コンテンツを共有できるようになった。
各国著作権法があるのに、iOSが一度ヴァージョンアップしてしまうと、それのほうが拘束力を持ってくることが考えられる。
「知財」についての問題はコンテンツ分野だけに収まらない。ビッグデータによるプライバシーの問題、3Dプリンターなどのデジタルファブリケーションによるコピーの問題。「知財の専門家には“直近の課題”が多すぎて、5年先10年先の課題に取り組んでいる余裕が無いのが問題」と遠藤氏は語る。
もうIP(Intellectual Property)というルールではカバーできないのではないでしょうか。裁判するよりは、違う力学でIPに代わるものをやったほうがいいのではないかといった議論も、角川アスキー総研が関わるIP2.0という研究会ではされています。