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レゾナック松古氏が語る、利益と社会貢献の二項対立を超える「サステナビリティ戦略」

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 これまで日本の成長を支えてきた製造業でも、合併と業界再編を契機とする変革が行われてきています。昭和電工株式会社と昭和電工マテリアルズ株式会社(旧日立化成)が統合した株式会社レゾナックでは、「化学の力で社会を変える」というパーパスを掲げて、社会課題の解決を起点にした持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでいます。株式会社ヒューマンバリューが主催した「『GROW THE PIE』出版記念フォーラム─パーパスと利益の二項対立を超えて、持続可能な経済・経営を実現する─」から、株式会社レゾナック・ホールディングス サステナビリティ部 部長の松古樹美氏による講演の様子をレポートします。

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企業合併による事業ポートフォリオの変化

 「『GROW THE PIE』出版記念フォーラム ─パーパスと利益の二項対立を超えて、持続可能な経済・経営を実現する─」の実践企業セッション2社目として、株式会社レゾナック・ホールディングス サステナビリティ部 部長の松古樹美氏が登壇。

 最初に株式会社ヒューマンバリュー 研究員の霜山元氏は「『化学の力で社会を変える』というパーパスを定めて新たなスタートを切ったレゾナック。長い歴史がある日本の大企業にとって、改めてパーパスを設定した同社の取り組みは参考になるのではないでしょうか。特に金融機関と事業会社の経験を持つ松古さんは『GROW THE PIE』を語るのにうってつけの方です」と紹介した。

 松古氏は、野村総研、野村證券、野村アセットマネジメント、オムロンを経てレゾナックに入社。働き始めた当初はIRやM&Aにおけるコーポレートアドバイスを行う立場で、世の中は資本市場でできており、ステークホルダーは企業と投資家しかいないと思っていたころもあったという。20年近い金融機関での経験で「金融機関目線でのESG投資やサステナビリティの取り組みは、本当に企業を取り巻く全体の幸せに繋がっているのか、そのなかでの企業価値とは何か」と考え、金融会社に投資される側の事業会社に転職したのだという。そして2年前に企業統合により新たに生まれかわるタイミングにあるレゾナックに移ったと語る。

 そもそもレゾナックは、昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が合併してできた会社である。Resonacとは、共鳴を意味するResonate(レゾネイト)に化学のChemistry(ケミストリー)の「C」を加えた造語だ。統合後の現在を第二創業期と位置づけて改革に取り組んでいるという。

 「元々昭和電工は石油化学に関わる大きなコンビナート運営や化学品、黒鉛電極などを主に手掛けるBtoBの中でも川上、川中に位置していました。それが日立化成と合併することで、より川下に近い半導体や電子材料、モビリティのための自動車部品やリチウムイオン電池の材料も手掛けるようになり、総合化学からスペシャリティケミカルへの変革を目指しています。それ以前からも黒鉛電極の業界トップシェアになる買収を行ったり、統合後これまでに9つの事業を売却したりと、かなりのスピードで事業ポートフォリオを変えてきています」と松古氏は紹介する。

 機能性化学メーカーへとビジネスモデルを転換するにあたり、組織や人、考え方などを変えなければならないというのが経営にとっての共通の問題意識だったそうだ。

 「2社が統合するにあたりパーパスを『化学の力で社会を変える』と定めました。私たちは材料を手掛ける企業です。あらゆる産業の起点にある化学が様々なステークホルダーと共創すれば、様々な課題を解決できます。最初にその立ち位置を認識することが大切でした」と松古氏は言及する。

 一方で「化学は物事を根源から変える力も持つので、光をもたらすこともあれば、影を落とすこともあります」と指摘する。松古氏はプラスチックを例に挙げて、「プラスチックのおかげで便利な生活が享受できるようになった反面、プラスチックごみや海洋汚染が問題になっています。これからは様々な視点を持っている方々と一緒に、開発も解決策も考えていく必要があります」と述べた。化学業界に閉じるのではなく「共創型の化学会社として事業を展開していくためにこのパーパスを定めた」のだと松古氏は説明した。経済と社会の二項対立でなく、共創を通じて、市場や関係する人々を大きく捉えていくことがパーパスの実現には必要だと考えています。

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この記事の著者

上野 智(ウエノ サトル)

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