デロイト トーマツ グループは、世界的な非財務情報開示の標準化・義務化の潮流において、日本企業の対応状況と課題を把握するため、「ESGデータの収集・開示に係るサーベイ2023」を実施した。
同サーベイは2022年度に引き続き実施され、2023年度は132社189名(うち東証プライム約86%、東証スタンダード約1%、非上場約13%)から回答が寄せられたという。主な調査結果は次の通り。
非財務情報の開示を巡る外部動向のモニタリング・分析
ESGデータの開示をめぐる外部動向で企業が注視しているものとしては、「有価証券報告書(以下、有報)へのサステナビリティ情報開示義務化」(90%)が最も高く、続いて「IFRS財団傘下のISSB(国際サステナビリティ基準審議会)による公開草案」(85%)となっている。特に、開示に関する内閣府令などの改正により、2023年3月期決算から義務付けられた有報のサステナビリティ情報開示については、昨年度調査(60%)よりも30%増加したとしている。
実際の開示におけるアクションでも、全体の8割を占める152名の回答者が直近年の有報においてESGデータを掲載したと回答。そのうち、対象データとして「2022年度実績」を掲載したと回答したのは82%、「可能な限り詳細に開示」したと回答したのは45%であり、タイムリーな開示に積極的な企業の姿勢がみてとれるという。
また、152名の回答者が有報に掲載したESGデータの内訳としては、「女性管理職比率」(93%)、「男女育休取得率」(80%)、「GHGスコープ1-2排出量」(76%)、「男女間賃金格差」(74%)が高かった反面、「GHGスコープ3排出量」の掲載は4割弱に留まり、データ収集の難易度の高さが開示の低さにつながったことがうかがえるとしている。
連結範囲を対象とした非財務情報の収集・分析、内部統制の高度化
サプライヤーのESGデータに関しては、「収集できている」との回答は1割に満たなかった上、約6割がサプライヤーの情報収集が「困難」と回答しており、現状のハードルを打破するためにテクノロジーの活用が期待されているという。現在導入しているシステムの課題としては、「データの精度が悪い、エラーチェック機能が甘い」との回答が42%と最も高く、2021年(21%)や2022年(28%)よりも上昇。システムのアップグレードや変更に対するニーズが高まっているという。
非財務情報の開示と自社の企業価値との関連性に関するモニタリング・分析
ESGデータの重要性が高まる一方で、その開示と自社の企業価値の関連性をどのように測ればよいかについて、多くの企業が頭を悩ませているという。過去2年間の調査結果と同様に、約7割の経営者がESGデータの開示と自社の企業価値に関する分析について「意思決定に活かしたいがまだ実施できていない」と回答。一方、「経営の意思決定に活かす取り組みを実施中」と回答した割合は暦年ごとに微増の傾向にあり、今後は具体的なアクションを行う企業が増加していくものと推察されるとしている。