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企業価値向上のための非財務資本活用

なぜ非財務資本が企業価値を左右するのか──事業戦略と投資家をつなぐ“カギ”とは

第1回

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 「事業と切り離された非財務資本は無意味である。非財務資本は企業価値向上のための礎であり、いかに管理・活用できているかを、戦略・データ・将来性と合わせて述べることはできないか」これは筆者自身が投資家から常に投げかけられる言葉です。近年、日本企業に対する非財務情報の開示要請が急速に拡大している背景から、非財務資本(特に人的資本、知的資本、社会関係資本)がどのような状態であれば掲げている事業戦略が達成でき、その実現可能性と比較して現状はどの程度かを可視化し、管理可能な状態にすることが、今の企業に必要な経営管理のプロセスだと考えます。本稿ではその具体例について考察します。

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日本企業に突き付けられた「企業価値向上」

 2023年3月、東京証券取引所がプライム市場とスタンダード市場に上場する約3,300社に、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」という通知文を提示しました。証券取引所が企業経営者全体に、企業価値向上に向けた経営実現を促すという内容だったことは記憶に新しいかと思います。既に2年前の出来事になりますが、この“異例の要請”の余波はいまだに継続しています。

東証はこの通知で、

  1. 資本コストや株価を重視した経営の実現
  2. 投資家との対話実績の開示
  3. 正確な情報開示

を主として求めています。

 中核は1つ目の「資本コストや株価を重視した経営の実現」です。プライム市場上場企業の約半数が当時ROE(自己資本利益率)8%未満かつPBR(株価純資産倍率)1倍未満という状況だったため、PBR1倍を超える=企業価値の向上を目指すべきという見解を強く打ち出しました。企業価値向上のため、企業は具体的にどのような改善活動を進めるのかを開示するとともに、そのために必要な「投資家との建設的な対話の実績」やその前提となる「正確な情報」の開示も求めるというもので、この3テーマが密接に関連しあって「企業価値(PBR)向上」を成すものだとしています。

 この要請の登場が、非財務情報を取り巻く状況を新たなステージに押し上げたといっても過言ではありません。

 冒頭の投資家の声のように、非財務情報を単独で取り扱うのではなく、企業価値向上のために

  1. 資本効率を意識したマネジメントにより収益力を高め投資余力を創出する
  2. 新たな成長の芽や競争力を獲得し将来の事業拡大やさらなる収益力向上を実現する

という2点のために非財務資本にいかに投資するか、活用するかが特に注目されています。

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この記事の著者

今野 愛美(コンノ マナミ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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