IBMの「コグニティブ」と「アナリティクス」の成果でビジネス思考をインスパイアする
IBMの「Watson」といえば、アメリカのTVクイズ番組「ジョパディ!」で人間を打ち破ったことでも知られる質問応答システム。一般には人工知能(AI)として知られているWatsonだが、IBMはAIではなく、人間の自然言語を理解し、意思決定をサポートする「コグニティブ(認知)コンピューティング」と定義している。Watson Analyticsも、こうしたIBMの長年のコグニティブ・コンピューティングと、データ分析や意思決定支援、データのビジュアライゼーションの研究の成果だ。そのWatson Analyticsが、クラウド上で使える分析サービスとして公開された。2014年9月の米国でのリリースを皮切りに全世界でユーザー数は100万人を突破し、日本でも使用可能だ。しかも無償版(フリーミアム版)であればストレージ容量などに制限があるものの登録後すぐに無料で使うことができる。
データ分析といえば、これまでもBI(ビジネス・インテリジェンス)と言われるツールは存在した。しかしそれらは、インフラの構築やデータベースとの連携といった準備がともない、ITの初期投資や専門家の支援が必要で、かつ時間のかかるものだった。Watson Analyticsの特長は初期投資不要なクラウドでの提供はもとより、「分析のノウハウがなくても、誰もがスピーディに分析結果を利用し、ビジュアライズできる」ことにある。ビジネスユーザー自らが分析結果を得られ、魅力的なレポートとしてまとめることができる。マーケティングや営業、財務、オペレーション、人事など、実務の現場のビジネスユーザーが、分析の知識を持たずとも分析結果を得ることができるというわけだ。
またデータ分析結果を、説得力があり、かつシンプルな図解(グラフやチャート)で表現できるのも魅力だ。ビジネスの実務家がデータをビジュアル化しようとすると、今まではExcelに頼るしかなかった。しかしExcelのデータのグラフ化に関しては限界があり、操作もわかりづらい。 Watson Analyticsであれば、後に述べるようにデータを読みこませれば、どのようなグラフが適しているかをリコメンドしてくれる。現場の実務者などが、統計の専門知識がなくても使えるというもの。しかもWatson Analyticsのグラフのビジュアル表現力はとても美しい。これによってデータに基づく統計的な思考と、視覚的、直感的な思考の両方の思考がインスパイアされるのだ。