これは、グラフェンにリチウムを加えた新材料を電極に用いることで、従来の活性炭を使ったものより約2倍のエネルギーを蓄電できるものだという。太陽光や風力発電などの自然の力で発生したエネルギーも無駄なく利用できるほか、電気自動車のブレーキ時に失ってしまう運動エネルギーを蓄電装置に電気エネルギーとして効率的に回収し、モータの駆動エネルギーなどに充てることが期待できるという。今後は小型・高性能なキャパシタとして実用化をめざすとしている。
キャパシタは、分子レベルの厚さで構成される2枚の電極の間で電荷が引き合うことによって電気を蓄える「電気二重層」という物理現象を用いて、電気エネルギーを短時間で効率良く充電・放電でき、劣化が少ないという特徴がある。
一方、電池(バッテリー)に比べて、作った電気を長時間連続的に流したり、大容量の電気を蓄えるためには、静電容量を増やす技術が求められているという。
松本教授は、ナノ材料であるグラフェンにリチウムを練り混ぜた新材料(MICCTECにより開発された還元型酸化グラフェン)を装置の電極に用いることで、大容量の蓄電が可能になることを解明した。電極の隙間にグラフェンが入り込み、表面積が増加することで蓄えられる電力量が増す仕組みだという。また、これを用いたキャパシタを試作して電気特性に関する評価を行い、従来の活性炭を用いたものより約2倍の蓄電に成功した。
これにより、太陽光、風力発電などの需要と供給のバランスが取りにくい自然エネルギーを蓄えることが可能となるほか、電気自動車のバッテリーにキャパシタを追加することにより、ブレーキ操作時に失ってしまう大量の運動エネルギーをモータ稼働用の電気エネルギーに効率良く変換することができ、自動車の省エネ化・性能向上につながると期待されている。
今後は、試作したキャパシタを「急速に充放電ができる、小型・高性能な大容量蓄電装置」として、再生可能エネルギーや電気自動車、電子機器などで実用化できるよう、使用シーンに合わせた電気特性の評価などを進めていくという。
なお、この技術は1月27日(水)~29日(金)に東京ビッグサイトで開催中の「nano tech 2016」にて展示・紹介している。