慶應義塾大学教授の井庭崇さんの研究室では、「創造的読書(クリエイティブ・リーディング)」という読書のコツをまとめた成果『Life with Reading – 読書の秘訣』を発表した。これは井庭さんが研究してきたパターン・ランゲージという手法にもとづいてまとめられた読書術だ。
パターン・ランゲージとは、人が培ってきた経験則や暗黙のコツを、誰もが使えるように言語化し共有することで、創造的な活動を支援する方法。もともとはクリストファー・アレグザンダーという建築家がつくった方法だが、井庭さんはこれを様々な分野に応用し実践している。
井庭さんは、社会の変化を、人々が「コンサンプション(消費)」を重視した時代から「コミュニケーション」の時代になり、今後は「クリエーション(創造)」の時代に移行していくという。今回のテーマの「創造的読書」は、こうした創造性の時代の「本の読み方」を提唱するものだ。
今回紹介された『Life with Reading – 読書の秘訣』は、本を読みこなし、楽しみ、かつ創造につなげるためのコツを言語化したもの。読書の27のコツがパターン・ランゲージの形式で定義されている。
トークイベントでは、井庭さんがそれぞれのパターンを紹介し、それに対してゲストが、自分の読書についての経験談を語り合った。さらに、会場ではこの言葉とイラストが書かれたカードセットが参加者に配られ、セミナー参加者も「読書の秘訣」カードを用いて、グループごとに体験談などを語り合った。
ソニーで働くかたわら、ハピキラというお菓子のパッケージデザインの会社をはじめ、パラレルキャリアを実践する正能さんは、全然本好きではなく「去年まで7冊しか本を読んだことがなかった」という。本嫌いだからこそ、本を読むイベントやミートアップの司会を頼まれるそうだ。「NIKUBOOKS」という本を読みながら肉を食すイベントでは、「池波正太郎さんの『男の作法』をみんなで読んで池波流すき焼きをつつく」など、「あくまで現実を楽しくするガソリン」として本を楽しんでいるという。
一方、あかしさんは大の本好き。大学時代には京都の本屋でアルバイトをしていた。現在ではサイボウズでオウンドメディア『サイボウズ式』の企画編集をしながら、複業でもフリーランスの編集者・ライターとして活動しているという。
中川さんは、会場である「岩波ブックセンター」を企画・発案した人。UDSでホテルやオフィススペースの企画・プロデュースをしてきた。井庭さんとの共同作業では、これまでも企画のコツをまとめた『プロジェクト・デザイン・パターン』(翔泳社)の発行に関わってきた。
この4人が「読書のコツ」について語った。以下はそのトークの内容だ。