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5G時代に向け大手と協業するSynamonがめざす「エンタープライズVR」とは

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 ここ数年多くのVRビジネスが生まれてきたがエンターテイメント領域のVRブームはやや落ち着いた感がある。それに代わって、5G通信に向けて注目されているのがVRのビジネス利用だ。VRベンチャーのSynamonは、KDDIを始めとするCVCから資金調達を果たし、大手企業との協業による「ビジネスVR」の事業を本格的に始動した。「エンタープライズVR」を事業のコンセプトにする、Synamonの武井さんに話を聞いた。

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「エンタープライズVR」のリーダーをめざす

武井 勇樹(たけい ゆうき)
一橋大学商学部卒業後、株式会社SpeeeにてWebマーケティングのコンサルティングに従事。2016年10月よりUC Berkeley Extensionへ留学、在学中にYコンビネーターを卒業したSaaSスタートアップGigwellにてインターンを経験。2018年からSynamonに参加、現在はBizDevや広報のマネージャーを担当。

──設立の経緯をお聞かせください。

 VR元年と呼ばれた2016年に、元々大手メーカー系SIerを経てWebマーケティングの会社にいた武樋恒とアニメ/映像業界で10年以上フリーランスのアニメ3Dのモデラーだった西口雅幸の二人でゲームを作ることから始まりました。武樋はもともと大企業の中でビジネス展開していてコミュニケーションロボットに造詣が深く、西口はモデラーからソーシャルゲームのエンジニアを経験していて3DCGのスキルを持っていたんです。

 私自身は、それまでシリコンバレーで日本のスタートアップの人たちを取材するメディアを個人で運営していて、VRに可能性を感じていたこともあり武樋から声をかけられて参加しました。

──コンシューマVRではなく、あえてビジネス市場にフォーカスした理由をお聞かせください。

 当初は、対戦型のVRゲームを作っていたのですが、デバイスもまだ普及の初期段階で、ユーザー数が伸びなかったんです。そこで限界を感じて、CGとVRの技術をビジネスで活かすことを決めました。「エンタープライズVR」の市場でナンバーワンになろうと戦略を切り替えたのです。

──「VRのビジネス利用」とはどういうものでしょうか?

 具体的には、会議、教育・研修、セミナーなどのコミュニケーション領域です。 VRは没入感によるコミュニケーションの革新をもたらします。VRを使って複数人がコミュニケーションすることで、遠隔地にいる者同士がつながるとともに、仮想の環境にいることによる一体感が生まれ、クリエイティブな環境が実現できると考えています。

 そのためにVRのコミュニケーション基盤となるシステム「NEUTRANS」を独自に開発しました。この「NEUTRANS」をベースにして、遠隔会議などのコラボレーションツール「NEUTRANS BIZ」や、お客様企業の要望に合わせてVR活用システムを独自構築するための仕組み「NEUTRANS SOLUTION」などをエンタープライズ向けに提供しています。

── アイデアや企画のブレストなどに良さそうですね。

 VR型の遠隔会議では、VR環境の中で、ペンでものを書いたり、プレゼン資料や会議に必要なデータなどをインポートできます。参加者はアバターになって音声で対話することや、ホワイトボードやペンを使って、空間にチャートを書いてイメージを共有するなどの使い方が出来ます。また録画する機能もあるので、会議の内容を後で再現することもできます。

NEUTRANS BIZ

── Skypeなどの動画やSlackなどに比べて、VRを使うことのメリットは何でしょうか?

 VRの効果としては、同じ仮想の空間に席を並べている臨場感があることや、身振りや手振りによって、ダイレクトに伝わることです。

 もうひとつのポイントはN対Nのコミュニケーションができること。Skypeは基本的に1対1で、SlackだとN対Nですがテキストベース。N対Nでビジュアルにやりとりできることが、最大のメリットだといえます。

 NEUTRANS SOLUTIONの最近の例としては、パソナさんと一緒にやった「VRおもてなし研修」があります。これは訪日外国人に、英会話で対応ができるようにするための研修のシステムです。VR空間のホテルのロビーや、観光客向けの接客スペースを再現して、英語による対応スキルを身につけることができます。遠隔から教えることも出来るので、自宅で子育てしながら教える外国人の先生もいます。生徒もアバターが相手なので、ゲーム感覚で緊張せずに学ぶことができます。

 またKDDIさんは、各拠点間をつなぐ会議を、「NEUTRANS BIZ」を使われていて、そうした成果を踏まえて協業を進めています。

5Gに向けての協業を推進

──VRといえば、通信上の遅延や「VR酔い」などの問題も指摘されますね。

 遅延が起きないようにグラフィックを最適化するなどの技術的な部分は僕らの強みです。またビジネス活用のために、UI/UXには徹底的にこだわりました。たとえばものを持つとか投げるなどの基本動作を独自に開発しています。ユーザーに違和感のない作りにしています。

── 今後、5Gが発達してくればVRのビジネス活用も高まるのでしょうね。

 KDDIがオープンしたIoT、5G時代のビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」ではKDDIと協業し、5G時代を見据えた実証実験をおこなっています。またNTT東日本主催のアクセラレータープログラム第2期にも採択されました。グローバルなベンチャー支援企業の「Plug&Play」のアクセラレーションプログラムには、IoTの枠で採択していただきました。

── 企業の事業開発でもVRとなると、可能性は感じるがなかなか手を出せない。そういう企業に提供するサービスを狙うということですね。

 今、大企業でVRを使って新しい取り組みを行いたいという企業が増えていますが、VRの専門知識や技術を持つエンジニアというのはなかなか調達できない。その部分を我々と一緒にタッグを組んでオープンイノベーションという形で取り組んでいていただければと思います。

 音楽のライブと同じで、体験することが価値です。百聞は一見にしかずです。事業開発や企画のプロジェクトでぜひVRに取り組んでほしいと思います。

【取材後記】

 本記事の取材の後、Synamonは、KDDI株式会社設立の「KDDI Open Innovation Fund 3号」、 三井不動産株式会社設立のCVCファンド「31VENTURES Global Innovation Fund 1号」、 三井住友海上キャピタル株式会社、 SMBCベンチャーキャピタル株式会社、 個人投資家を引受先に第三者割当増資と、 金融機関からの融資により約2億4,000万円の資金調達を果たした。

 この資金調達と並行し、KDDIは「NEUTRANS BIZ」を商品ラインナップとしての取り扱い法人顧客開拓サポートを開始するという。三井不動産株はコワーキングスペース、 「31VENTURES Clipニホンバシ」および「31VENTURES KOIL」でも、「NEUTRANS BIZ」の導入を開始する。「5G☓VR」のテクノロジーが、「働き方改革」や企業のコミュニケーション変革にどのような影響を与えるか、注目されるところだ。

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