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宇宙のマルチプレーヤー人工衛星はなぜ必要か

Vol.5

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望遠鏡を衛星の軌道に乗せることで高精度の天体観測を可能に

 21世紀初頭において、もっとも一般に普及した人工衛星の利用法と言えば、全地球測位システム(GPS)だろう。もとは軍事用に開発された技術だが、カーナビやスマートフォンの地図アプリなどに使われるなど、現代人の生活に欠かせない技術の一つとなっている。

 ただし、人工衛星の軍事利用がなくなったわけではない。とくに1990年に勃発した湾岸戦争では、機密情報の通信やミサイル誘導などにGPSが使われた。

 科学研究にも人工衛星は貢献している。たとえば 複数の衛星で編隊を組み、それぞれに搭載した機器で降雨量、オゾン量、温度などを同時測定するという運用法により、地球の状態を正確に観測することも可能になった。

 また、人工衛星に望遠鏡を搭載することで、より高精度な天体観測ができる。こうした衛星は「宇宙望遠鏡」と呼ばれ、地上からの観測では大気が障害となるが、大気圏外の軌道からならばよりクリアに観測・調査が可能になる。現在、ハッブル宇宙望遠鏡やハーシェル宇宙望遠鏡(ともに2009年打ち上げ)が稼働しており、太陽系内外について多数の知見をもたらしている。

 ただ、人工衛星には対策が迫られる大きな問題がある。膨大な数の人工衛星が打ち上げられている現在、使用不能となった衛星がデブリ(宇宙のゴミ)となり、他の衛星に衝突するなどの被害を及ぼす可能性があるのだ。デブリの除去は困難をきわめるため、稼働している衛星がデブリを回避するべくレーザーで検知する技術の研究も進められている。

 今後の人口増加や資源の枯渇を考えると、人類の宇宙開発は必然と言えるのかもしれない。人工衛星の可能性が広がり、私たちは宇宙をさらに身近に感じることだろう。

(翻訳協力:株式会社トランネット)


SERENDIP編集部コメント

 普段、私たちが人工衛星の存在を意識することは、それほど多くないだろう。だが、人工衛星はGPSやテレビ放送など、身近な生活に欠かせないだけでなく、宇宙開発の進化を促し人類の未来を切り拓く、重要な役割を担っている。人工衛星を例にして、テクノロジーが私たちの生活や未来にどう関わっているのか、じっくり考えてみてはいかがだろうか。

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『Satellite: Innovation in Orbit』(『人工衛星のすべて』─宇宙空間で躍動するイノベーションの軌跡)

Doug Millard 著 | Reaktion Books | 2017/02 | 208p

書影目次
1.人工衛星という発想
2.人工衛星がやって来る
3.人工衛星が現実のものに
4.万人のための人工衛星
5.人工衛星の科学
6.人工衛星と科学の発展

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