『アウト・オブ・フォーカス レッドオーシャンをハズす、勝つための経営術』は、北海道のITベンチャーであるINDETAILを経営する坪井大輔氏が、自身の経営を支える「アウト・オブ・フォーカス」の考え方にもとづいた経営ノウハウについて解説した1冊。
坪井氏は話題になった『WHY BLOCKCHAIN』の著者で、元々はIT系の人材派遣会社に勤務。自社に技術がないと立ち行かなくなるという危機感から在職中にアイテック北海道を設立し、その後代表取締役に。現在はINDETAILと社名を改め、主要事業を売却してブロックチェーン事業に集中している。
地方で起業し、世界に展開することを大きな目標としている坪井氏。東京への一極集中に疑問を持ち、地方で起業を考える若手にとって、坪井氏が歩んできた道はノウハウの宝庫だと言える。坪井氏自身、本書を執筆したのは若手が同じ失敗や苦労してほしくないという思いからだ。本書では自身の経験をまとめ、経営を始め組織作りや事業開発、資金調達などの方法論を解説している。
アウト・オブ・フォーカスとは坪井氏の経営思想そのもの。「当然そうするだろう」というピントを少し外し、想定外の価値を作る考え方だ。たとえばそれは、準備してきたIPOを白紙に戻しただけでなく、主要事業を売却して今後世界的に普及するであろうブロックチェーン事業に先んじて注力するという決断からうかがえる。
本書には坪井氏の生の体験が詰め込まれている。これから起業を考えている方、あるいはまさに資金調達をして事業を育てようとしているといった方におすすめだ。
目次
序章
1章 経営者
・質の高い情報を取ることは社長の永遠の任務
・社長は社内一の分からず屋であるべき
・4人家族と100人家族でお父さん像は異なる
2章 事業
・技術を持たない会社はいらない
・市場の変化を先読みして事業を仕掛けろ
・見えないリスクを見通せ
・事業は情報の掛け算から生まれる
・アイデアだけでは何の価値もない
3章 組織・人事
・IPOはベンチャーには諸刃の剣
・「管理職のプロ」はいないと思え
・嫌われることを恐れては何もできない
4章 M&A
・成長した事業は自分の手を離れるもの
・業種を横断できる「プロ経営者」が必要だ
5章 労働
・寝食を忘れて没頭する人が一番かっこいい
・ストレスは必ずある。大事なのは回復力だ
・滅私奉公を愛社精神と履き違えてはいけない
6章 お金
・複数の資金調達ルートを組み合わせろ
・VCに聞かれることは共通していた
・売上げと販管費が比例するのはダメな経営
7章 地方
・地方にエコシステムはない。でもそれを言い訳にしない
・地方企業が抱える最大のハンディは人のマインドだ
・東京に対する「貿易赤字」をなんとかしよう
8章 思想
・人脈もビジネスも量より質。自分の時間単価を下げるな
・異業種で講演することにはメリットが多い
・日本は世界の国の一つにすぎない
終章