今回発表した調査は、2020年6~7月にオンラインで実施し、日本企業を中心に95社から有効回答を得ている。海外先進企業の取り組みをステージ3.0とした場合、日本平均はステージ2.0に留まるなど取り組みの遅れが目立つものの、コロナ禍により経営トップの重要性が改めて認識されたこと、上場企業についてはコーポレートガバナンス・コードに対応した経営者サクセッション(後継計画)への取組みが本格化していることにより、次世代経営人材の発掘・育成に対する危機感が増していることがうかがえたという。
調査結果のハイライト
日本の企業の次世代経営人材発掘・育成施策は“ステージ2.0”が現在地
相対的に「育成」施策に注力しており、戦略的な次世代経営人材の発掘・育成の起点となる「人材要件」定義への取り組みが遅れている。
現在の取り組みに対する満足度は高くない
現在の取り組みに満足しているのは回答企業の14.9%のみ。
次世代経営人材の発掘・育成を経営課題と認識し、危機感は強い
経営陣が取り組みを主導するとした回答企業が55.3%と前回調査(2016年)より経営陣の関与が強まっている。また、回答企業の58.5%が社外取締役からの要請・依頼を受けている。
4割以上の企業が経営人材育成・サクセッションのアプローチを変えていく
回答企業の41.5%が大幅にアプローチを変えようとしている。ただし、欧米企業に比べると改善レベルの割合が高く、改革や抜本改革にまでは至っていない。
求める経営者像が変化
アフターコロナを見据えて再構築した経営戦略の実現には従来とは異なる経営者が必要だと考える企業は多く、約6割が今後要件定義に注力すると回答している。
候補者プール構築が進み、候補者も若年化
約8割の企業が候補者プール(候補人材の蓄積)を構築しており、総合職全員を経営人材候補と位置づけ一律的な対応をしてきた従来のアプローチからのシフトが進んでいる。約半数の企業が30歳代前半までに最初の選抜を行っているが、経営人材育成施策の早期化は世界的な傾向である。
経営人材候補の評価に対するアプローチは二極化傾向
4割近い企業が経営人材としての特別な評価は実施していない一方、3割強の企業は行動特性に加え性格特性や動機といった人物面も包括的に診断しており、取り組み姿勢が二極化している。外部の専門家にアセスメントを依頼する割合は増加しており、将来への示唆の抽出が重視される傾向にある。
候補者一人ひとりにデザインした経験の付与が最大課題
リーダーシップ研修を中心とした育成アプローチが最も多く、全体の約4割を占めた。ただし、回答者の9割弱が「候補者の特性に応じて経営者に成長する上で有効な経験をデザインする」取組みを強化すると答えており、ステージ3.0への進化が期待される。