設立の背景・目的
「デジタルネイティブ世代」にとって、近年の銀行窓口来店客数の著しい減少が表すように、対面での銀行取引は従来と比べ縁遠い存在になりつつある。更に、新型コロナウイルス感染症による行動様式の変化により、その傾向は一段と加速している。また、様々な業界でデジタルの特性を活かした新しいサービスが次々に誕生する中で、金融業界は依然として対面取引をベースとした画一的なサービスの提供に留まっており、金融サービスの提供水準とお客さまのニーズ・期待水準の間には大きなギャップが生じつつある。
こうした中で、2015年時点で日本の生産年齢人口に占める割合が33.7%のデジタルネイティブ世代は、2030年には61.9%を占める中核世代になると推計されており、金融機関が今後も持続的に成長・発展していくためには、これらの世代にマッチしたサービスプロバイダーとしてのアップデートが必要となる。
様々な利用シーンにおけるフリクション(摩擦・障害)を取り除き、顧客一人ひとりにパーソナライズされた金融サービスを提供するためには、「従来の」銀行の延長線上にあるシステムや業務プロセスの制約に縛られることなく、組織・企業カルチャーの変革もダイナミックに行う必要があると判断し、「みんなの銀行」を設立して、これまでにない新しい銀行のカタチを目指すことにした、と述べている。
みんなの銀行の経営理念
みんなの銀行は、デジタル起点で発想し、ゼロベースで設計された次世代のデジタルバンク。口座開設からATM入出金、振込など、全てのサービスがスマートフォン上で完結できる新しい銀行として、お金との関係をもっと自分らしくシンプルに、そしてフレンドリーにするために、新しい銀行のカタチを「みんな」で創りたいと考えている。
(1)みんなの銀行のミッション(私たちの使命):みんなに価値あるつながりを。
みんなの銀行が目指すのは、人や企業、様々なコミュニティにとって真に『価値』あるモノを仲介することができるプラットフォームになること。従来の「お金のマッチング(金融仲介)」から、『価値のコネクティビティ(価値仲介)』を高めるサービス業として、新しい銀行のカタチを目指す。
(2)みんなの銀行のビジョン(私たちの将来像):世の中のヒト、モノ、オカネ、情報 を「つなぐ」存在として、銀行というビジネスドメインの先にある「新しい金融機能」の提供を通じた新たな価値を創造する。
上記(1)のミッションを実現するためのビジョンとして、みんなの銀行が考える「新しい金融機能」として次の3つを挙げている。
- 価値仲介(Value):全ての資産を取引可能なものに分解・流動化し、 法定通貨に限らない資産(価値)の取引を仲介する
- 信頼創造(Trust):過去の実績や支払能力に留まらず、対象者の将来における信頼性(誠実さ、行動等)を評価・可視化する
- 決裁(Decision):法定通貨に限らない資産(価値)を、自らの意思を反映(選択・判断)して移動させる
(3)みんなの銀行のバリュー(私たちが共通して持つ価値観)
上記(2)のビジョンを実現するためのバリューとして、①「銀行らしさ」からの脱却 ②「ユニーク」へのこだわり ③「信じて、頼られる」を挙げている。
デジタルネイティブな次世代バンキングシステム
みんなの銀行では、FFG傘下のシステム開発子会社であるゼロバンク・デザインファクトリーが構築した次世代バンキングシステム「Zerobank Core Solution」を利活用した事業運営を行う。同システムは、アクセンチュアを開発パートナーとして、国内の金融機関としては初めてGoogle Cloudが提供するGoogle Cloud Platformを勘定系システムの構築基盤として採用する等、最新テクノロジーの活用を通じて構築されており、クラウドネイティブに適した造りとなっている。
同システムの利活用により、システム運用コストの最適化が図られると共に、柔軟かつ迅速な商品サービスの開発・提供や、高度なセキュリティの下で様々なエコシステムとの柔軟な連携を進めることが可能となり、ミッションとして掲げる「みんなに価値あるつながりを。」もたらす新たな価値提供を実現していくと述べている。
サービスコンセプトと事業ドメイン
みんなの銀行では、デジタルネイティブ世代が抱える課題・ニーズを解決するために3つのサービスコンセプトを掲げ、個人向け金融サービスの提供(B2C事業)を軸とした3つの事業ドメインを段階的に展開。
(1)みんなの銀行のサービスコンセプト
- みんなの『声』がカタチになる:お客さまの行動変容に即した新しい金融サービスを提供する
- みんなの『いちばん』を届ける:それぞれのお客さまへの深い理解に基づく総合金融コンシェルジュを目指す
- みんなの『暮らし』に溶け込む:暮らしと隣接した様々な消費・購買と金融機能がシームレスに結び付いたサービス体験を提供する
(2)事業ドメイン
- B2C事業:全国のデジタルネイティブ世代をターゲットに、スマートフォンで完結する金融サービスを提供
- B2B2X事業:みんなの銀行の金融機能・サービスを、APIを介して事業パートナー(主に法人)に提供
- バンキングシステム提供事業:システム開発/運用業務の内製化を進め、システム・機能自体を提供/販売
事業戦略
FFGでは、第6次中期経営計画(2019年度~2021年度)の基本戦略の1つに「デジタルトランスフォーメーション(以下「DX」)の推進」を掲げ、様々な施策を展開している。その中でも、FFG傘下のiBankマーケティングが提供するスマートフォン向け銀行公式アプリ「Wallet+」は、提供開始から4年間で130万ダウンロードを突破し、9つの地域金融機関とのアライアンスを実現する等、DXの加速・実現に向けたノウハウ・知見の蓄積が進んでいる。
これらの経験を元に、みんなの銀行ではシンプルかつデジタルで「銀行」そのものを ”Re-Design(再デザイン)”、”Re-Define(再定義)” することで、国内初のデジタルバンク(チャレンジャーバンク)としてのポジションの確立を目指すと共に、BaaS(Banking as a Service)による事業パートナーとのエコシステム連携を通じて、「銀行」の枠組みを超えた新たな価値共創を目指していくとしている。