電通グループは、2021年2月に発表した2021年度から2024年度を対象期間とする電通グループ中期経営計画のアップデートを発表した。2022年度は、構造改革から「事業変革と持続的成長」フェーズへと移行する転換点だとして、成果や事業環境をレビューし、同計画をアップデートしたという。同時に、1月より社長執行役員 CEOに就任した五十嵐博氏のもと、持続的成長を見据えた新しい経営方針「B2B2S」を提唱し、中期経営計画の戦略や目標をさらに具体化している。
2022年度以降は、構造改革による効果と共に、急成長するカスタマートランスフォーメーション&テクノロジー(CT&T)領域の市場を捉えながら、事業変革と持続的成長のフェーズへと移行していくという。
社会環境が変化する中、「電通グループは、顧客、パートナー、従業員そしてすべての⽣活者の成⻑に寄与することによってよりよい社会を実現するために存在する。」という存在理由の重要性はさらに増しているとし、1月からの新経営体制のもと、これを具現化する新しい経営方針として「B2B2S」を提唱。今後、電通グループは「B-to-B」のさらにその先にあるS(ソサイエティ)と向き合う、「B-to-B-to-S(Business to Business to Society)」企業グループへ進化し、顧客企業との仕事を通じて、社会課題をともに解決することで、社会全体に中長期的に価値を生み出していくという。そして、株主、顧客企業、パートナー、従業員、それぞれにとっての同グループの「企業価値」を最大化することを目指すとしている。
この企業価値の最大化に向けて、2021年の中期経営計画で打ち出した「インテグレーテッド・グロース・ソリューション(IGS)」と、4月にローンチを予定している「dentsu good - a sustainability accelerator(dentsu good - サステナビリティ・アクセラレーター)」という2つのソリューションを備える。これら2つのソリューションに加え、「2030サステナビリティ戦略」の遂行、「サステナブル・ビジネス・ボード」のリードによる事業成長とサステナビリティ戦略の統合、および複数のガバナンス強化施策により、同グループのESG経営を進化させ、企業価値の向上へと繋げていくとしている。
アップデートした中期経営計画のアクションプランとターゲットは次のとおり。
1.事業変革と成長
- 高成長領域であるCT&TへのM&A投資によるケイパビリティの拡充
- データ&テクノロジーによるマーコムの競争力の徹底的強化
- インテグレーテッド・グロース・ソリューション(IGS)の提供によるキークライアントとの関係拡大
- dentsu good - a sustainability accelerator(dentsu good - サステナビリティ・アクセラレーター)のグローバルローンチ、顧客・パートナーとの協業によるソーシャル・グッドの推進
ターゲット
- オーガニック成長率:2021年度を基準に2024年度までCAGRベースで4〜5%
- 売上総利益に占めるCT&T領域の構成比を今後50%へ高めることを目指す
2.オペレーションとマージン
- 組織簡素化の継続推進による経営オペレーション効率の改善
- ニアショア・オフショアのケイパビリティ強化によるサービスのデリバリーコストの低減
- テクノロジーの積極活用によるコラボレーションの進化
ターゲット
- 2023年度までオペレーティング・マージンを17.0%~18.0%のレンジでマネージし、2024年度には18.0%を確保
3.資本配分と株主還元基本方針
- 2024年度までに約700億円をオペレーション、ケイパビリティ、サービス開発へ設備投資
- 戦略領域へ集中したM&Aのために2,500〜3,000億円の原資を確保、買収後の早期統合を重視した規律ある投資行動
- 漸進的な配当性向の向上
ターゲット
- Net debt/調整後EBITDA(期末)の上限を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍とする(IFRS 16控除ベース)
- 配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)を漸進的に高め、2024年度までに35%へ
4.ソーシャルインパクトとESG
- 「2030サステナビリティ戦略」の遂行
- 「サステナブル・ビジネス・ボード」による事業成長とサステナビリティ戦略の統合
- DJN:チーフ・ダイバーシティ・オフィサー、DI:チーフ・エクイティ・オフィサーによるDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進
- 経営幹部の報酬制度への非財務指標の反映
ターゲット
- 2030年度までにCO2排出量を46%削減、2030年度までに再生可能エネルギー使用率100%を達成(利用可能なマーケットに限定)
- 従業員エンゲージメントスコアの向上
- 従業員のDE&Iの強化。2030年度までに女性管理職比率を30%(DJN:25%、DI:50%)へ