電通グループのR&D組織「電通イノベーションイニシアティブ(以下、DII)」は、パナソニックホールディングス(以下、パナソニックHD)、およびDIIの共同研究先各社と共同で、環境課題や人権課題などに対する社会貢献行動を促進するブロックチェーン技術を活用した基盤開発のプロジェクトを始動する。
同プロジェクトは、日本の大学生が被支援者と寄付者を繋ぐ役割を担い(ファンドレイザー)、日本のシニア層を中心とする投資家が、彼らを金銭的に支援する基盤を構築する。この基盤は、寄附金の使用用途や成果について検証が可能となる厳格なトレーサビリティを確保するとともに、学生の社会貢献活動の達成状況を示すトークンにより非地位財領域の与信評価を得ることができるという。さらに、ブロックチェーン技術を活用することで、トランザクション処理における管理間接コストの最小化を実現するとした。
同トレーサビリティ基盤を用いて、ファンドレイザーである学生・被支援者・投資家の三者は、チャネル上で日々の交流が可能になる。さらに、学生は非営利セクターでの活動実績を非地位財として就職活動などに活用できる与信認定を獲得し、シニア層を中心とした投資家はこれまでの金銭による直接的支援では成立困難であった他の支援者との交流機会や、若年世代との情緒的なつながりを構築することができるという。同社と共同研究各社は、同実証を通じて非地位財経済圏向け与信提供サービスの市場性について検証し、持続可能な社会貢献コミュニティの実現に資する機能実装を進めるとした。
DIIは、同取り組みにおいて、トークン解析に関する知見を提供するとともに、ODKソリューションズらと近畿大学の学生を対象に取り組みを進めている「アプデミー」の実証実験で得られた実績証明トークンを用いて、当人のアイデンティティ解析を行うシステムの設計実装に関する知見を提供する。パナソニックHDは、環境を含めた社会貢献⾏動のレベル設計や⽣活者個⼈や社会全体のこうした⾏動の可視化の知⾒を提供し、トレーサビリティ基盤を通じて、1人ひとりの暮らしに寄り添い、ウェルビーイングな暮らしと他者・社会・地球環境への貢献を両立していく事を目指すとした。
また、DIIと共同研究各社は同実験結果を基に、非地位財領域での活動実績情報をメタデータとしてブロックチェーン上での展開時の手続きの標準化に取り組むという。さらに、加盟するCCCにて、将来の脱炭素実績証明ユースケースとしての提案や、ブロックチェーン推進協会のID・トレーサビリティ部会などでの検証結果の公開などを予定している。
同プロジェクトにて扱う社会課題リストは、ファンドレックスの協力を得て作成し、Table Unstable DAOやアプデミーに参画する日本の大学生がファンドレイザーとなり課題の優先順位を決定、それぞれが寄付ポートフォリオを作成。投資家は、学生ファンドレイザーの寄付ポートフォリオや発信内容を参照し、自身の支援先を選定する。
一例として、インドの教育格差課題への取り組みでは下図のような流れを想定している。寄付金は高等教育機関受験料や学費のほか、学用品や下宿先の手配費用など相当額が貯まるまで金融機関に供託され、被支援者が受験する段階や、入試に合格し入学手続きに進めるようになった段階など、局面に応じて金融機関から現地機関に対してトークン認証技術を用いた正当性の確認プロセスを経て支払われるという。従来の寄付と異なり、寄付者は自身の寄付金がどの学生の支援に、どのように活用されたかまで追うことが可能とのことだ。