国産生成AIの開発、そしてビジネス面での挑戦の後押しをするGENIAC
2つ目のパネルディスカッションのテーマは「オールジャパンで考える日本の生成AIの未来」。パネリストとして登壇したのは、渡辺琢也氏(経済産業省 情報産業課 情報処理基盤産業室長)、そしてGenerative AI Japan理事を務める大谷健氏(日本マイクロソフト)、小俣泰明氏(アルサーガパートナーズ)および河野昭彦氏(パナソニック コネクト)の3名だ。ファシリテーターはGenerative AI Japan発起人・理事の漆原茂氏(ウルシステムズ株式会社)が務めた。
まず渡辺氏から、現在自身がリードしているプロジェクト「GENIAC」の紹介があった。
一年半前、ChatGPTの登場により、生成AIはかつてないスピードで広がった。これは一般市民のみならず、大企業や政治家の間でも同じだったという。また、生成AIにおいてはルールメイキングと技術の話が非常に密接不可分な状況が続いており、渡辺氏は「これまでとは違う」と肌で感じたと語る。
日本は人口減少の中で経済成長を遂げねばならないという大きな課題を背負っているなか、DXの余地がとても大きい国でもあり、生成AIの持つインパクトや可能性はとても大きい。こうした背景から、日本でも生成AIの開発力の底上げを図ること、そして個々のビジネス主体が創意工夫して挑戦することの両立を目指し、GENIACは発足した。
GENIACは主に3つの部分からなる。第一に、計算資源であるGPUの提供だ。今年2月からスタートしたこのプロジェクトは、GPT-3.5相当の性能の生成AIを国内で開発することを目指し、計算資源を10社に提供している。2024年10月からは社会実装を重視した次のフェーズが開始される。
次に、データの利活用の促進である。良質なデータの不足や対価還元の仕組みの欠如、個人情報保護の問題がAIの利活用を阻んでいる現状を踏まえ、これらの課題解決に向けた取り組みが進められている。
3つ目は、ナレッジシェアである。マイクロソフト、Google DeepMindなどとの連携のもと有識者の交流イベントを展開するほか、開発者だけでなくユーザー企業とのマッチングにも取り組むなど、国内外の連携を図っている。
IT業界で長く活躍するファシリテーターの漆原氏も、GENIACのスピード感は驚きであり、それだけ日本政府が力を入れている証拠なのではないか、と話す。