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ISO56000シリーズの誤解と本質──効率経営からイノベーション経営へ移行する組織デザインとは?

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IMSの導入と実装に立ちはだかる3つの誤解とは

 IMS導入に際してはいくつかよく聞かれる誤解(問い)がある。

 まず、「イノベーションを『管理』することはできないのではないか」というもの。当然イノベーション活動は管理的に行うものではない。そんなことをすれば個人や組織の創造性を摘みとってしまうだろう。IMSとは、どうしても効率性を追求するようになっている「本業」においても、創造性を効果的に発揮できる、つまりイノベーション活動を戦略的体系的に進めるための組織的な仕組みである。

 次に、「IMSを導入するとイノベーションが起きて新事業がすぐに生まれるようになるのか」といったものだ。多くの企業で、デザイン思考ワークショップやハッカソンなどが行われるが、これらはイノベーションの長期的な視座(スコープ)やどのようなイノベーションを展開するかといった、ポリシーに基づき、常にフィードバックを行うことが必須である。それらがなければ、「イノベーション劇場」と揶揄される活動になってしまうだろう。

 JINは2023年10月に「IMSサミット2023」というイベントを開催し、米国からリーンスタートアップの父、スティーブ・ブランク氏を招いた。その際に彼が主張したのは、「イノベーション劇場」は組織文化を刺激するものではあるが実効性は薄いという辛辣なメッセージだった。多くの会社でイノベーション活動といえばハッカソン、アイデアソンという時代があったし、ピッチイベントも流行した。しかしこれらは「イノベーション劇場」なのである。

 答えが長くなったが、ポイントは「IMSは特効薬ではない」ということ。しかしイノベーション劇場で時間を費やすのでなく、イノベーション活動のポートフォリオを構築し、効果的効率的に試行錯誤をするような「イノベーション活動」にシフトする組織的な連携、ナレッジマネジメント、さらにチェンジマネジメントが重要である。

 最後が、「システム」という概念の誤解だ。情報システムのように、何かパッケージ(箱もの)を買ってきて、そこでイノベータを泳がせればイノベーションが起きるといった“箱物発想”は短絡的であろう。ここでいう「システム」とは、有機的な資産の関係性をデザインすることだ。

 読者の中にはビジネスモデルキャンバス(BMC)を活用した経験がある方が多いのではないだろうか。BMC同様に、全社的に資源や能力を再構築(デザイン)し、イノベーション活動を加速支援し、持続的なイノベーションをシステムとして行う経営に転換することが、IMSの狙いである。なぜイノベーションがうまくいかないかを認識し、(ビジネスモデルキャンバスのように)各要素に新たな関係性を生み出すことだ。

IMSの導入フレームであるIMSAPとは

 JINではISOに準拠したIMSAP(Innovation Management System Assessment-Application-Acceleration Program)というプログラムを提供している。その概要を以下に紹介する。

画像を説明するテキストなくても可
資料提供:一般社団法人Japan Innovation Network/クリックすると拡大します

 Camp I(アセスメント)、II(ポリシー等の策定)、III(活動支援・モニタリング)は、Studio(基本学習とチーム形成)から導入されることが多いが、企業・組織の状況によって実践からスタートすることもある。ただし、いずれもISO56000シリーズ準拠で行われる。その過程で、イノベーション・マネジメントのプロフェッショナルを育成しようとしている。以上とともにJINでは、海外のIMS先進事例に学ぶ「Global Studio」を展開している。ちなみに2024年度にはスウェーデンを訪問し、実地調査や関係者との議論を行なった。

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日本企業にとっての知識創造理論とISO56000シリーズ

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この記事の著者

紺野 登(コンノ ノボル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

尾﨑 弘之(オザキ ヒロユキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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