SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

再現性のあるイノベーション経営の型

ISO56000シリーズの誤解と本質──効率経営からイノベーション経営へ移行する組織デザインとは?

  • Facebook
  • X
  • Pocket

ISO56001と56002の現況

 ここで、認証規格であるISO56001とすでに2019年に発行されているガイダンス規格のISO56002について、それぞれの意義と、それらがどのようなインパクトを与えうるかについて、各国の動きも交えて考察したい。

 まずISO56001から解説しよう。これはイノベーション・マネジメントシステムに関する国際規格である。この規格は、組織で定めたイノベーションの意図および戦略に基づき、組織的な支援体制を整え、組織としてイノベーションの取り組みをマネジメントし、継続的に改善するための要件を定めている。認証規格であるので、「組織として“必ずやるべきこと”」が示されている。

 一方、ISO56002はガイダンス規格であるため、「組織としてやるべきことが“推奨”」されている。そのため、イノベーション・マネジメントシステム(IMS)としての「高い完成度」と「イノベーション活動の成功確率の向上」を実践的に目指すのであれば、ISO56002を参考にするとよい。

 今回、認証規格としてISO56001が発行されたことで、IMSに対する国際的な関心は一層高まっている。例えば日本においても、ISO56001の知名度が少しずつ上がっていることで、JINにも多くの問い合わせが寄せられている。国内でもIMS導入を始めている企業が増えているが、世界に目を向けるとさらにその状況は顕著である。

 隣国・中国では、ISO56000シリーズの国際交渉に知的財産を管轄している官庁が参加しており、イノベーションを国としての知財戦略にも位置づけ積極的にIMSを進めている。ISO56001への国際交渉にも積極的に参加しており、規格発行後の普及も進んでいると聞く。

 ISO56001のインパクトは大きく、アジア内ではインドやタイ、ベトナム、マレーシアに加えて、中東諸国でも動きが活発化している。中東はもともと英国との繋がりが深く、認証ビジネスが盛んなこともこの動きに拍車をかけている。

 ヨーロッパに目を移すと、もともと認証の本場であることからも、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、スペイン、ポルトガルなど多くの国でISO56001の発行に向けた準備がスタートしている。

 元来イノベーション・マネジメントの国際規格作りを主導していること、すでに同様な内容の規格がヨーロッパ規格として存在していたこともあり、比較的スムーズにISO56001を受け入れる土壌はできている。ヨーロッパ内では、研究開発基金等のクライテリアにISO56001が利用される可能性があるということで、多くの国ではその前提で動きを加速させている。

 アメリカ大陸では、カナダ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンなどを中心にISO56001の準備が進んでいる。元々アメリカはIMSには積極的な姿勢を示していなかった。それは、シリコンバレー型のVCなどの潤沢な資金による華やかなイノベーション活動が隆盛を極めていたことが一因である。

 しかし、アメリカといってもお金や人材が集まりやすい西海岸、東海岸、シカゴなど大都市の一部を除き、多くの地域ではシリコンバレー型のイノベーション活動が限界に達していた。また、国家レベルのイノベーションでは、具体的な成果へのプレッシャーもある。そのため、近年では、リーダーシップや支援体制、評価体制も含めたIMSの重要性への認知度が高まっている。

次のページ
IMSの導入と実装に立ちはだかる3つの誤解とは

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
再現性のあるイノベーション経営の型連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

紺野 登(コンノ ノボル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

尾﨑 弘之(オザキ ヒロユキ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X
  • Pocket

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング