世界の「水問題」を解決するSenSprout(センスプラウト)
例えば、ステーキと付け合わせの簡単な食事をしたとします。これだけで2トンの水を仮想的に消費したことになります。
農作物などが生産されるまでに必要とされる水を推定する「仮想水」という概念。
私たちの食事には膨大な水が使われるが、日本では水不足が話題に上がることは滅多にない。しかし、カリフォルニアでは現在、1000年に1度といわれる規模の干ばつが4年続いている。また、インドでは慢性的な水不足と塩害に悩まされている。水は世界の食糧事情のかなめであり、その問題は社会課題だ。
本会の冒頭でこう語るのは、株式会社センスプラウト 技術アドバイザーの東京大学 准教授 川原圭博氏だ。川原氏は東京大学で開発した家庭用プリンターで回路基板を作ることができる技術を使って、従来よりも安価な土壌水用センサー「SenSprout」を開発した。
我々はSenSprout(センスプラウト)という土壌水用センサーを作っています。これは植物に必要な水を適切なタイミングで必要な量だけあげる判断をするツールです。従来の1/10以下の価格で提供します。
日本では農業用水に費用があまりかからないこともあるが、電気を使って地下から水をくみ上げるインドなどは、余分な水はそれだけでコスト増加の要因になる。SenSprout(センスプラウト)があれば必要な水の量を判断することができるため、農家のコスト削減につながる。
さらに、植物の成長は、水を「いつ・どれくらい」やるかによって変わる。だから、土壌の水分量を測ることで、作物が育つ「より良いタイミングと量」を理解して水をやることができるようになる。つまり、農業の生産性へも貢献することができるのだ。
当初、印刷により回路を構築する技術の活用先の一つとして、川原氏の論文の中で農業が触れられている程度だった。しかし、農学の研究者である西岡氏との出会いや、「農家さんから、本当にあったらそれ買うんだけど、いつできるの? など、心を動かされる手紙が何通かきた」ことがセンスプラウト社を設立し、世界の水問題に取り組むきっかけになった。