帝国データバンクは、2万6590社を対象とした2025年4月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表した。
2025年4月の動向:悪化
2025年4月の景気DIは前月比0.8ポイント減の42.7となり、2カ月ぶりに悪化。国内景気は、米国の「トランプ関税」による自社の事業への悪影響など先行きの不安から個人消費も伸び悩み、景況感が急速に冷え込んだ。

4月は、トランプ関税の影響で金融市場が乱高下し、先行きへの警戒感が高まった。規模や業種・地域を問わず景況感が悪化し、特に自動車・鉄鋼関連では、輸出の停滞が目立った。海外経済の減速や税関手続きの混乱も重なり、荷動きは低調だった。個人消費の弱さや原材料価格の高止まりも逆風となった。他方、インバウンド需要は堅調を維持し、人手不足対応の業種は安定。
今後の見通し:弱含みで推移
今後の国内景気は、トランプショックの影響を見極めながら、実質賃金の増加と個人消費の回復がカギとなる。米中など海外経済の減速や世界貿易量の縮小は輸出産業の下押し要因となり、為替動向、家計の節約志向も懸念材料に。他方、インバウンドの継続、減税や物価高対策、大阪・関西万博、IT関連の設備投資が下支え要因となる。また、大型連休の旅行需要も注目される。世界経済の不確実性が高まるなか、国内景気は当面、弱含みで推移すると見込まれる。

業界別:10業界中9業界が悪化、トランプ関税に対する警戒感強まる
10業界中9業界が悪化となった。トランプ関税に対する警戒感が強く表れ自動車関連を中心に幅広い業種で景況感を下押し。加えて、原材料価格の高止まりや苦戦する人材確保などもマイナスに作用した。

- 「製造」(38.5):前月比1.1ポイント減。5カ月連続で悪化。トランプ関税に対する警戒感が強い「輸送用機械・器具製造」は大きく落ち込んだ。「鉄鋼・非鉄・鉱業」は自動車や建機関連の不調、海外経済の減速などを受け16カ月連続で30台に停滞。「機械製造」(同1.6ポイント減)は、顧客の在庫調整や設備投資の慎重姿勢が継続といった声も聞かれ、6カ月連続で悪化となった。原材料の高止まりや低調な消費動向などが響く「繊維・繊維製品・服飾品製造」は2カ月連続で下落した。「製造」は12業種中7業種が30台に低迷した。
- 「卸売」(39.8):同0.9ポイント減で、3カ月ぶりに悪化。2022年9月以来2年7カ月ぶりに30台へ落ち込んだ。鋼材市況の低迷が継続といった声も聞かれる「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」は5カ月連続で悪化した。「化学品卸売」は自動車関係や建設関係の不振から4カ月連続で下落。「製造」「小売」の悪化に連動して在庫調整の動きが強まった。
- 「小売」(38.6):同0.6ポイント減となり、3カ月ぶりに悪化。「医薬品・日用雑貨品小売」は薬価改定による価格低下などから2カ月ぶりに悪化した。商品の値上げの影響を受け消費者の選択消費が続く「家電・情報機器小売」も下落。加えて、百貨店を含む「各種商品小売」も落ち込みが目立った。他方、「飲食料品小売」は値上げにともなう売り上げ増は景況感を押し上げた。
- 「サービス」(48.4):同0.3ポイント減で、4カ月連続で悪化。「建築の公共工事がない」(建設機械器具賃貸)など聞かれる「リース・賃貸」は建設業の停滞などが響き、2カ月ぶりに悪化した。「医療・福祉・保健衛生」はコスト増や診療件数の落ち着きなどから2カ月ぶりに下向いた。他方、インバウンドが下支えする「旅館・ホテル」や、飲食機会の増加にともない好調さが表れた「飲食店」は2カ月連続で改善。


規模別:全規模がそろって悪化、大企業・製造業の落ち込みが波及
「大企業」「中小企業」「小規模企業」が3カ月ぶりにそろって悪化した。「トランプショック」による大企業・製造業の悪化が、「中小企業」「小規模企業」の景況感を下押し。「金融」は「大企業」で2.4ポイントの大幅悪化となった。

- 「大企業」(46.7):前月比1.2ポイント減となり、2カ月連続で悪化。トランプ関税の影響を受けて「製造」が落ち込み、特に「輸送用機械・器具製造」、「鉄鋼・非鉄・鉱業」などが大幅に悪化した。
- 「中小企業」(42.0):同0.7ポイント減で、2カ月ぶりに悪化した。大企業・製造業の悪化により、自動車部品を中心に「輸送用機械・器具製造」も低調。さらに、「小売」は総合スーパーが大きく落ち込んだ。
- 「小規模企業」(41.0):同0.6ポイント減となり、3カ月ぶりに悪化した。「運輸・倉庫」は船用品費の高騰など物価高や荷動きの低迷がマイナス要因に。また「卸売」は「急に受注状況や問い合わせが減ってきている」こともあり悪化が進んだ。
地域別:10地域中9地域が悪化、トランプショックで地域の景況感を下押し
「東海」「四国」「近畿」など9地域が悪化し、「北海道」のみ改善した。都道府県別では35都府県で悪化。トランプ関税に対する先行き不安が強まり、設備投資の慎重な動きや工事の中止・延期などが、地域の景況感を下押しした。

- 「東海」(41.4):前月比1.7ポイント減となり、5カ月連続で悪化。1年2カ月ぶりに域内4県すべてが悪化した。トランプ関税の影響で自動車関連が落ち込んだほか、企業の設備投資の慎重な動きなどで「建設」も低調だった。
- 「四国」(39.6):同1.8ポイント減と4カ月ぶりに悪化し、9カ月ぶりに30台へ落ち込んだ。4カ月ぶりに域内4県がすべて悪化。企業の工事中止・延期などの影響で「建設」が全体の景況感を0.7ポイント下押しした。
- 「近畿」(42.7):同0.8ポイント減で3カ月ぶりに悪化。域内2府4県中5府県が悪化した。13日に大阪・関西万博が開幕したが、米中関係の悪化から「中国の輸出規制で商品が入荷しない」などの影響で「製造」が悪化した。

今月のトピックス:トランプ関税に関する企業への影響
- トランプ関税に対して、先行き不安や警戒感の高まりを懸念する声のほか、徐々に影響が表れているといった声が多数寄せられた。
- トランプ関税に関する声を寄せる企業の景気DIは38.1と全体より4ポイント以上落ち込んだ。


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