不確実な時代における最強の生存戦略
2025年に総額55億円の資金調達を実施したコミューン。この資金調達を機に、コミュニティマーケティングを支援するSaaSベンダーから、戦略から実務支援まで一貫して担う「信頼起点経営」のパートナーへの変貌に挑戦しているという。
同社が掲げる「信頼起点経営」の要とは、顧客や従業員との信頼を築くための投資が、経済合理性を持つこと、すなわち事業グロースにつながることを証明する点にある。特に注目すべきは、CX(Customer Experience)とEX(Employee Experience)を切り離さず、一つの循環として捉える視点だ。
この理念に至った経緯として、同社 代表取締役CEOの高田氏は、創業時の挫折を振り返った。コミュニティ支援のイメージが強い同社だが、かつてはサプリメントのD2C事業を営んでいた。
「当時はいわゆるD2C事業であったため、顧客データは持っていた。しかし、なぜお客様は自社を選び、なぜ離れたのか。その顧客行動の背景はまったく見えておらず、圧倒的な距離感があった。お客様と同じ方向を向く仕組みがなかった」と高田氏は当時を振り返る。
当時からテクノロジーは進化した一方で、企業と顧客、あるいは企業と従業員の間の「断絶」は解消されていない。「この摩擦こそが、現代の経営における最大の機会損失である」と高田氏は指摘する。
CXやEXの重要性については、賛同する方も多いだろう。しかし、CXやEXへの投資、すなわち顧客や従業員との信頼構築が売上に直接的につながるのかと問われると、そのメカニズムを可視化できている企業は少ないだろう。この問いに対して、高田氏は解を示す。
「我々が支援している企業を見ても、CXが良い会社は例外なくEXも良く、eNPS(従業員推奨度)が高い傾向にある。たとえば、今日のセッションにも登壇いただくトリドールホールディングスの事例では、従業員が生き生きと働く店舗ほど顧客のNPS(推奨度)が高く、結果として売上(坪単価)も高いことが、数値でも証明されている」(高田氏)
また大手飲料メーカーにおいても、従業員コミュニティの活性化に取り組んだ結果、様々な社内エンゲージメント指標が向上。さらには過去最高の売上を記録した事例もあるという。
従業員が自社を信頼し、誇りを持って働く(EXの向上)ことが、顧客への誠実な価値提供(CXの向上)を生み、その対価として事業が成長する。この「信頼のループ」こそが、不確実な時代における最強の生存戦略となるのだ。さらにAI化が加速すればするほど、逆に「人にしかできないこと」=「信頼に基づいた関係性」の価値の重要性が増すだろう。
続くセッションでは、共感から信頼を得て、信頼から事業を成長させている日産自動車や小林製薬などの企業のスピーカーが登壇。本レポートでは、次のページにてトリドールホールディングスの取り組みを紹介する。
