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戦略投資とファイナンス

戦略投資のファイナンス-NPVの良い点、悪い点

第3回

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NPVは、戦略投資案件を比較する共通の尺度

 戦略投資の意思決定には、NPV(エヌ・ピー・ブイ)という指標をよく使います。NPVは、下記の語句の頭文字を取ったもので「Net Present Value(正味現在価値)」。図3で使った式にあてはめると、以下のような関係になります。

NPVは儲けを示す便利な指標図4. NPVは儲けを示す便利な指標
価値がわかっていれば、儲けを考えられる

 この式の通り、NPVは儲けを示すものです。NPVがプラスであれば儲けがある、NPVがゼロまたはマイナスであれば儲けが無い、というのはとてもわかりやすい評価指標です。投資の意思決定では、NPVがプラスであれば投資可の案件である、というように使います。

 NPVのNetは、正味(差し引き)という意味で、図4の式では、PVと投資額の差を計算しています。PVは、Present Value(現在価値)という意味で、「現在」という時間の概念が含まれていることが、NPVの最大の特徴です。

 戦略投資は案件ごとに投資回収のタイミングが異なることが多く、案件間の比較が難しいものです。しかも、同じ金額の儲けならば遅いよりも早く得られる方が良い、という時間軸を考慮する必要があります。時間軸を考えたうえで案件間の比較を可能にするのが、「現在価値」という考え方です。この現在価値という評価指標を使うと、売上の立ち上がり方や、事業期間(ライフサイクル)が異なる案件も、現在の価値という共通の尺度で比較できるようになります。

 NPVの計算方法が説明してある書籍はたくさんありますので、ここでは計算方法の説明は省略します。良い書籍がたくさんあると思いますが、入門書としては、『ざっくりわかるファイナンス』(石野雄一 著、光文社新書)が読みやすくお勧めします。

 ここまではファイナンスの知識とNPVが便利であることをお伝えしてきました。実際、NPVもグローバルによく利用されている評価指標です。長所が多いNPVですが、ここから先は、戦略投資にNPVを活用する際の注意点についてご紹介します。

次のページ
便利なNPVの5つの注意点

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この記事の著者

小川 康(オガワ ヤスシ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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