戦略意思決定手法①不確実な状況で有効なフレーミング

第5回

 前回は、仮説検証型のビジネスプランニング手法「仮説指向計画法(Discovery-Driven Planning)」をご紹介しました。計画・実行開始時点で、成功に必要な条件・失敗に至る条件を仮説として洗い出し、事業の成功まで仮説検証を行いながら進めて行く、という方法論でした。しかし、組織では、一般的に企画者と意思決定者が異なるため、必然的に意思決定の問題が生じます。また、毎回個別対応をするのではなく、意思決定のプロセスを整備したいものです。そこで、今回から、組織の意思決定の質を高める「戦略意思決定手法(Strategic Decision Management)」を3回にわたってご紹介します。今回は、複雑であいまいな考えを、組織的に共有できるようにする手法について解説します。

[公開日]

[著] 小川 康

[タグ] ビジネスモデル 競争戦略 ファイナンス

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戦略意思決定手法
(Strategic Decision Management)とは

 「Strategic Decision Management(戦略意思決定手法、SDM)」は、1960年代に米国スタンフォード大学のロナルド・ハワード教授によって考案された意思決定手法です。「意思決定には品質がある(Decision Quality)」と考え、意思決定の質を高めることを目的にしています。戦略意思決定手法は、ハワード教授が会長を務めたコンサルティング会社Strategic Decisions Groups(SDG)を通じて、日米欧の大手企業に提供されてきました。特に、資源開発や医薬品開発のように、複雑で不確実な大規模投資の意思決定に豊富な実績があります。

 日本では、籠屋邦夫氏が第一人者として有名です。籠屋氏は、1990年代にSDGのパートナー(経営陣)の一人として活躍し、日本で数多くの大手企業に戦略意思決定手法を導入しました。「選択と集中の意思決定」(東洋経済新報社)などのわかりやすい著作がありますので、読者の皆さんも、是非ご参照ください。

 ちなみに私は、籠屋氏の著作等で戦略意思決定を学び、インテグラートのシステムにもその考え方を実装してきました。そして、SDGにもインテグラートのシステムを是非使ってもらいたいと考え、2005年からSDGと日本でセミナーを開催したり、2年ほど活動を共にしました。本連載では、スタンフォード発・SDG直伝のエッセンスを皆さんにお伝えしていきたいと思います。

意思決定の質を高める6つの要素

 戦略意思決定手法では、以下6つの要素が意思決定の質を高める、と定義しています。

意思決定の質を高める6つの要素 鎖の絵が描いてあるのは、どれか一つが欠けると、意思決定の質が下がる、ということを示しています。図1は、SDG社とインテグラートが提携していた当時の講演資料からの抜粋です。講演者が約200名の参加者を対象に、自社ではこの6つのうち何が足りないと思うか、講演中に挙手をしてもらう形で質問をしたところ、「リーダーシップとファシリテーション」が最も多い回答でした。しっかり決めてくれよ、というのが部下から上司への本音のようです。

意思決定とは、選択である

 戦略意思決定では、「意思決定とは、選択である」と定義されています。つまり、単に、“やるか・やらないか”、ということではなく、“何をやるべきか、選択するものだ”、というわけです。選択肢が複数あれば、そのなかから、最も価値判断基準に合うものを選ぶことが可能になります。

 しかし実務的には、選択肢を考え出すところが難しいものです。戦略意思決定手法の素晴らしいところは、選択肢を作り出す方法もカバーしているところです。

 それでは、意思決定のプロセスと、ツールをご紹介していきましょう。

フレーミング

 組織的に意思決定を行うには、「意思決定の対象範囲を明確に定める必要」があります。これを定めずに検討を進めると、どこかの段階で「そもそも何をやっているのか?」というそもそも論が後から生じかねません。意思決定の対象範囲を定めることを、枠組みを定めることにたとえて「フレーミング」と言います。フレーミングのフレームは、写真のフレームと同じ言葉で、まさに「枠」という意味です。

 意思決定者は広い市場を念頭に置いて考えたり、ある技術やアイデアなどの事業機会を最大限活用したいと考えるものです。一方で、企画担当者は具体的に顧客を想定したり、つくりあげたい製品イメージを先行させることがあります。それぞれはもっともなのですが、お互いにフレームのずれを認識していないと、どこかの段階でこのずれから問題が発覚しかねません。このような問題を避けるため役立つのが、検討対象のずれを認識し、修正するフレーミングです。

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