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なぜ日産自動車は人事システムを刷新したのか

ワークデイ株式会社 代表取締役社長 金翰新 連載第一回

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人材という経営資源の計画や戦略を担うのは人事の領域。しかしこれまでの日本企業の人事は、管理業務主導で戦略的な取り組みを担ってこなかった。デジタル化によって企業の変革が進む中、今後は【IT×人事】による変革が求められる。その鍵となるのが「データ」だ。人事領域でのデータの活用や分析をどのようにおこなうか。日産自動車による導入などの実績を元に、ワークデイ株式会社の代表取締役の金氏が、データ活用に寄る人事変革を論じる。

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疎かにされてきた人事の本当の役割

2016年5月、日産自動車が、グローバルな人事に対応するために「Workdayヒューマン キャピタル マネジメント」を導入したことを発表した。本連載では、なぜ日産自動車が、今このタイミングで人事システムを刷新する必要があったのか、これから人事に求められる役割を踏まえて、探っていく。

第1回となる今回は、経営戦略における人事の役割について考える。今、皆さんの企業における人事部というのは、どういう位置づけにあり、どんな業務を果たしているだろうか。残念ながら、国内企業における人事部の立ち位置は、必ずしも高いとはいえない実情がある。企業によっては、人事部が財務・法務などの管理部門に分類されていることもあれば、経営企画の下の部署に配置されていることもある。経営者の右腕、と呼ぶには発言力も立場もないという企業が多いのではないだろうか。

人事部の業務内容は、採用、教育、人事評価、人材配置、賃金や労働時間の管理など幅広い。本来は、経営戦略にのっとった人材確保、配置、育成、さらには法制度やマーケットの変化といった、世の中の変革にあわせた人事制度の整備など、経営に直結する課題に対応する重要な部署である。しかし、日々の業務実態を見てみると、労働時間や休暇の取得、給与の支払管理など、いわゆるオペレーション業務が7割を占めるというのが現実だ。人事部のトップから「戦略的な業務の重要性は認識しているものの、日々のオペレーション業務に時間がとられてしまっている」という悩みを聞くことも多い。

一方で、人事部の役割の重要性を認識し、システムを含めそのあり方を変えようとしている企業も出始めている。Workdayが日本に上陸した2年前、日本にはCHRO(Chief Human Resource Officer:最高人材責任者)がいないので、まずはシステム導入の意思決定者を見極めることが1つの鍵であった。しかし、2年後の今、CPO(Chief People Officer:最高人材責任者)をたてている企業も出始めたのである。HRという言葉は、雇用者側が従業員を「リソース」として見ているところがあるが、Peopleという言葉が使われていることから、雇用者、従業員が対等の立場で人として関係を築くという方針が感じられる呼称である。

人事の役割の重要性に気づき、より経営戦略に関わる人材管理を進めているのは、成長するグローバル企業が多い。彼らは、日本市場での成長に限界を感じ、グローバル展開をしているが、そこで成功するには、より広い視野での人材獲得、配置が必要であることを実感しているからだ。

DHR International Japan株式会社 がグローバル化を進める企業の経営者および上級管理職を対象に行なった調査でも、グローバル化対応のための人材育成確保は各社の最重要事項であることを明らかにしている。

参考:
ホワイトペーパー「グローバルビジネスに 本気で挑戦するために 第1回 リーダー人材確保に待ったなし 」DHR International Japan株式会社

同様に、KPMGの2016年の調査では、日本の99%(世界では96%)のCEOが次の3年で社員数を増やしたいと述べていることからも、経営者が成長のためには「人」が最も重要であることに気づき、重点を置いていることを示していることがわかる。

戦略的人事にはデータが必須

オペレーション業務重視の人事から戦略的業務重視の人事に変わるためには、まず経営陣に人事の重要性を立証する必要がある。これまで、人材配置などは「勘」に頼って行われてきた側面は否めない。例えば「海外赴任を誰にするか」といった時に、「年次的に」「柔軟性が高そう」など、人事部の勘や印象で決めていることはないだろうか。そうではなく、「このスキルがある」「会社にとってこれだけのプラスがある」というように、データを元にした人材配置が提案できるようになることで、経営陣に戦略的人事のあり方を提案できるようになる。戦略提案にはデータが必要で、データがなければ経営陣を説得できないということを忘れてはならない。

経営目標を実現するために、人事として何ができるか、という視点から考えると、これまでの業務にも異なる側面が見えてくる。例えば、社内の文化作り、制度作りという視点にデータをどう活かせるだろうか。弊社では、従業員の福利厚生の一環として、Beer Bust と称し、誕生日を祝う会を毎月開催しており、そのための予算を確保している。開催するだけでなく、予算が正しく使われているか、従業員の満足度向上につながっているかということを定期的に評価している。予算が多すぎれば抑制しなければいけないし、従業員の満足度向上につながらなければ、開催する意義がないからである。単純なことではあるが、会社が定義した従業員満足度向上という戦略に対して、人事担当者がデータを使って企画をし成果を示すのである。

企業文化や制度を作っていくのは、経営者ではなく従業員であるが、人事部はそのための場作りをしていかなければならない。会社の理念に通じるプログラムやイベントを通して、その理念を浸透させることで、従業員の積極的な関与を図り、会社の事業拡大にもつながっていくのだ。

なお、企業が成長し人材が入れ替わる中で企業文化は変化していくことを忘れてはならない。歴史ある企業ほど新入社員に企業文化を教えようとするが、それは正しいアプローチではない。教えられた企業文化に違和感があれば、それがきっかけで離職につながることもありうるのだ。

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金 翰新(キム ハンシン)

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