人生を決める「決定的瞬間」
ほんの短い瞬間が、大きな変化を導くことがある。マーケティングや流通の業界では有名な「真実の瞬間」という言葉がある。これは1981年にスカンジナビア航空のCEOに就任したヤン・カールソンの言葉で、「顧客フロントの従業員が顧客に接する15秒間が、最終的に企業の成功を左右する。」というものだ。(『真実の瞬間』ヤン・カールソン)
同じように人生においても、その後の人生を大きく変えてしまう瞬間がある。ある人にとっては運転を学んだことがその後の仕事や昇進におおきな影響を及ぼす。キャリアにとって、就職、転職、昇進などいくつかのマイルストーンがあるが、それぞれにつながる決定的瞬間があることに後になって気づくこともある。
「作家スティーヴン・キングが子供の頃、初めてオリジナルの物語を書き、母親に読んでもらったところ、母親から「本になってもおかしくないほど良くできているわ」と言われたという。スティーヴン・キングは、「後にも先にもこれほど嬉しいと思ったことはない」と述べている。」(エド・トンプソン氏)
決定的瞬間の特徴は、めったに発生せず、増幅効果があることだ。親の後押しの一言、面接での上司の言葉、仕事でお世話になったメンターなど、キャリアにとっての決定的瞬間につながることが多いとトンプソン氏は言う。そして決定的瞬間を意識すること、糧にすることはキャリア、人生を豊かにするという。
組織・社会・業界における決定的瞬間を意識せよ
企業戦略家やマーケター、イノベーターにとっては、決定的瞬間を自らの組織、業界や、顧客に当てはめて考えることは意義があるとトンプソン氏は言う。組織の場合はM&A、新任CEO、新製品、新チャネルが転換点となる。トンプソン氏があげた代表的な企業の決定的瞬間は、以下のものだ。
- IBM [新任CEO]: ルイス・ガースナー氏(1994年3月)
- Western Union [新規チャネル]:電報(1851年)/ファクス(1935年)/衛星(1974年)
- Nokia [新製品]:紙(1871年) — ゴム(1898年) — ケーブル(1912年) — 電子機器(1963年) — 携帯電話(1982年)
- Beijing Automotive Group (BAIC Group) [新規競合]:Beijing Automotive Industry Holding
- Walt DisneyとPixar Animation Studios[M&A] 2006年1月24日に合併— 「ウォーリー」「カールじいさんの空飛ぶ家」「メリダとおそろしの森」「インサイド・ヘッド」「塔の上のラプンツェル」「アナと雪の女王」
- Daimler-BenzとChrysler [M&A] :1998年11月12日にし、2007年に解消
- Smith & Nephew[新規顧客]:従属人口指数が33%を超えているため、創傷管理や整形外科の医療機器の販売が急増