テクノロジーが“人間の作法”を学ぶ「ナチュラル・インターフェース」──未来は目的地ではなく方向である

SPACE10 in 100BANCH イベントレポート Vol.2

 IKEAのグローバルフューチャーリビングラボ、SPACE10が世界中から注目を集めている。IKEAの100%出資にもかかわらず、IKEAの社員は誰も常駐しておらず、一企業の枠を超えて、未来の人と社会を見据えたプロジェクトを生み出すことに成功している異色のラボである。
 7月末、持続的にイノベーションが起き続ける「生態系」を研究(Think)しデザイン(Do)する、シンク・ドゥ・タンクの株式会社リ・パブリックがSPACE10の共同創業者であるサイモン・キャスパーセン氏、カーベ・プール氏を招き、渋谷にある100BANCHでイベントを行った。「サーキュラー・エコノミー」「オープン・イノベーション」「社会実験」の3つの軸で語られたイベントの内容を2回に分けて報告する。Vol.2は、プール氏が語った「ナチュラル・インターフェース」についてである。

[公開日]

[講演者] カーベ・プール [取材・構成] フェリックス清香 [写] 和久田 知博 [協力] 市川 文子 白井 瞭 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 テクノロジー AR SPACE10 ナチュラル・インターフェース リテイルAI

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家にIKEAがやってくる。SPACE10によるARを使った新しいカタログアプリ

 IKEAは聖書よりも多くの出版物を発行する世界最大の出版業を行う企業である。そう聞くと驚く人は多いだろう。今やIKEAは世界中に店舗を構え、それぞれの国でカスタマイズしたカタログを作り、発送しているのだ。それはつまり、多くの紙を使用し、顧客とのコミュニケーションに大きな努力をしているということでもある。そんなIKEAが、おもしろいアプリを始めた。

 このアプリ、IKEA Placeを起動してスマホのカメラと連動すると、スマホのスクリーンに自分の家にIKEAの家具を置いた姿が映し出される。家具はリアルサイズの3Dで、角度や位置を変えることが可能だ。ちょうどポケモンGOでスマホのカメラを通して現実世界にポケモンが現れたかのように見えるのに似た感覚である。これを使えば家具を買って帰り、家に帰って置こうとしたら、サイズが合わなかったということがなくなる。

IKEA Place写真出典:https://space10.io/ikea-place/

 コンピューターを用いて人工的な環境を作り出し、あたかもそこにいるかのように感じさせるバーチャル・リアリティ(Virtual Reality)は多くの人が知るものとなった。エンターテイメント業界を中心に実用化が進んでいる。一方、このIKEA PlaceやポケモンGOは、オーグメンテッド・リアリティ(Augmented Reality、拡張現実、以降AR)と呼ばれるテクノロジーを利用している。現実の世界にデジタルで作り出した知覚を重ね合わせることで、現実世界を「強化」するのだ。

 とあるスタートアップ企業がこのARを利用して、地図のナビゲーション機能を考案した。現在、地図アプリのナビゲーション機能を使う場合、人々は地図をスクリーン上で見て矢印をたどりつつ、目の前の現実の道路を進むという行動を行なう。しかしARのナビゲーションでは、「裸の男」が道案内をしてくれる。ARナビゲーション機能でスマホのカメラで道路を写し、スクリーンを通して見る。そしてスクリーンの中にいる裸の男を追いかけていくと目的地につけるようになるのだ。

 笑ってしまうような機能だが、実はGoogleはこの春、1年以内にGoogleマップにこれと同じARナビゲーション機能を実装すると発表している(*1)。ナビゲーション役は裸の男ではなくキツネなどの動物になるらしい。多くの人がスマートフォンを持つことでARの使い方に広がりが生まれ、さまざまなサービスが誕生している。

*1:Google I/O 2018 keynote in 14 minutes(キツネの登場は、00:10:06頃)

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