AI時代のデザイナーの役割──テクノロジーの監視、コラボレーション、サーキュラーモデルの推進

 11月2日、今年10周年を迎える慶應義塾大学メディアデザイン研究科(以下、KMD)が開催した、KMDフォーラム2018「Journey(ジャーニー)」。デザインコンサルティングファームIDEOのCEOティム・ブラウン氏が来日。「A NEW AGE OF DESIGN デザインの新時代」と題した基調講演後に、KMD委員長の稲蔭正彦氏を聞き手に対談を行った。その様子をお伝えする。

[公開日]

[講演者] ティム・ブラウン 稲蔭 正彦 [取材・構成] 高橋 ミレイ [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] デザイン思考 AI・機械学習 第四次産業革命 サブスクリプション サーキュラー・デザイン

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テクノロジーが社会に影響を与える時代に、デザイナーに投げかけられた「チャンス」と「責任」とは?

稲蔭 正彦 氏(以下、敬称略):第四次産業革命は、多くの人に影響を及ぼし、急激な変化への対応を要求します。ですが、人間はすぐには変化に順応することができません。特に、第四次産業革命のテクノロジーは変化のスピードが非常に速く、対応力の差が大きなディスラプションを引き起こす要因となり、格差も広がっていくと思っています。このような時代に、どのように「人間」というものを定義し、デザイナーは第四次産業革命に関わっていくべきなのでしょうか?

ティム・ブラウン氏(以下、敬称略):この質問に対しては哲学者でも呼んできたほうがいいかもしれませんね(笑)。我々デザイナーが行っている仕事の中核は、やはり「人間中心思考への対応」だということを忘れてはなりません。そして、第四次産業革命はデザイナーに対して「責任」と「チャンス」を同時に与えます。場合によっては、テクノロジー変革を制御することも必要だと考えています。

テクノロジーは私たちに利益を提供するものであって、不利益をもたらすものであってはなりません。シリコンバレーに住んでいると、ついつい私たち人間がテクノロジーのために仕事をしていると錯覚を起こす瞬間がありますが、それはナンセンスです。テクノロジーは人間が発明したものであり、発明を人間の課題解決に使わないのであれば、存在意義はありません。

デザイナーは、テクノロジーが人々を阻害しているか、助けになっているかを見極める必要があります。また、テクノロジーに関して持っていた前提が正しかったか否かを測ることもできると思います。

現代のように、アートとデザイン、テクノロジーの境界が曖昧になった時代は過去にはありませんでした。同時に、デザインに関わる職種も領域が溶け合っています。グラフィックデザイナーや建築家、インテリアデザイナーなど、デザインに関わる職種がありますが、それぞれの職種は定義されていました。しかし、今はどのようなデザイナーであっても、広範なデザインの問題を考えることができ、デザイナーの守備範囲が広がっていることが最も特徴的なことだと思います。

ティム・ブラウンティム・ブラウン氏(IDEO CEO)
1962年生まれ。1987年にビル・モグリッジ率いるデザイン会社ID Twoに入社。1991年3社合併によるIDEO誕生後はサービス、インタラクション、エクスペリエンスのデザインに関わり、同社のヨーロッパ部門を統括。2000年創業者のデビッド・ケリーからCEO職を引き継ぎ、現在は社長兼CEO。著書に『デザイン思考が世界を変える』など。

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