経費精算を業務時間外に行なっている人は59%
官民あげての「働き方改革」の号令に、モヤモヤした気持ちを抱く人は多いだろう。「残業せずに早く帰れ」と「業績を上げろ」という相反する指示に現場の社員は困惑する。その上に「コンプライアンスを守れ」も加わる。
業績を上げるためには、外に出て営業し出張や接待もガンガンこなす──そういう人にとっては「社内のデスクワーク」はなるべく減らしたいもの。中でも、足をひっぱっているのが「経費精算」だ。
特に外回りの多い営業職などは、経費精算が大変だ。マネーフォワードがおこなった調査では、45%の会社員が「経費精算で自己負担をしたことがある」と答えている。自己負担する経費の平均金額は4,764円で、営業担当のみのデータで見ると5,355円。また、59%が「勤務時間外に経費精算をしたことがある」と答えている。「少額なら面倒だから経費精算しない」という日常よく見かける光景が数字で裏付けられた。
同調査によると、社員一人あたりの経費の申請には「毎月66分」かかっている。これに対して経営者は、「想定以上に経費精算に時間がかかっていると思う」と79%が回答した。もし経費精算の時間が減らせるなら、「残業削減」「本業」「顧客とのコミュニケーション」「自己研鑽」に使いたいという回答が多かった。
例えば、従業員100人の会社の場合、経費精算にかけている時間を年間コストに換算すると、管理する経理部の人件費として26万円、社員にあたる申請者が109万円、管理職などの経費申請を確認する承認者が41万円かかっていることになる。
営業担当などの現場の人はお客さんのためにもっと時間を使いたい。一方で、会社は残業を減らしたい。どちらにとっても経費精算をする時間が無駄になっているのです。(マネーフォワード 今井さん)
だとすれば経費精算をIT化することが、働き方改革の近道のはず。IT化で改善できる分野であることは確かだ。にもかかわらず、経費精算のIT化は進んでいない。中小企業が利用する経費精算ツールは、54%が多くの手作業が発生する「紙とエクセル」で、自動化できるクラウド型のサービスの利用は全体の6%にすぎない。