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イノベーションの切札は「守りと攻め」の二刀流

Vol.4

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探索事業と深化事業にまたがる共通のアイデンティティが重要

 組織のリーダーが既存事業の成功を深化させながら、既存の組織能力を活用して新市場を探索する両利きの経営を行って初めて、長期の成功がもたらされる。

 探索と深化をどちらも同時に実現するためには、それぞれをサブユニットに分けるだけでなく、異なるビジネスモデル、組織能力、システム、プロセス、インセンティブ、文化も必要である。両利きの経営で要求されるのは、リーダーがこうした違いを育んでいくことだ。

 一方で両利きの経営に求められる要素には、探索事業と深化事業にまたがる共通のアイデンティティもある。協力が必要なことを正当化する共通のビジョンがない限り、探索事業と深化事業は互いに邪魔や脅威と見なす可能性が高い。また、ビジョンがあれば、従業員は探索において重要な長期的なマインドセットを身につけやすくなる。

 USAトゥデイでカーリーは戦略的意図(「新聞ではなく、ネットワークになる」)をはっきりと打ち出し、探索ユニットと深化ユニットがいずれも同じ組織の一員として協力し合うべき、正当な理由を示した。そして、組織全体に適用される共通の価値観(公正さ、正確さ、信頼性)という形で、共通のアイデンティティを与えている。

 その結果、具体的な文化規範(顧客志向、リスクのとり方など)はユニットごとに異なるが、価値観自体は共通している。つまり、何が重要かをめぐって、全員が同一の基本的な考えを共有しているということだ。


SERENDIP編集部コメント

 探索と深化の「両利き」という考え方は、経営や事業展開だけでなく、個人の「学び」や働き方、ひいては生き方にさえも応用できる。一つの目標へのアプローチを「両利き」で考えるなど、探索と深化を意識する習慣をつけることで、新たな可能性が見えてくるかもしれない。

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『両利きの経営』

チャールズ・A・オライリー/マイケル・L・タッシュマン 著 | 入山 章栄 監訳・解説 | 冨山 和彦 解説 | 渡部 典子 訳 | 東洋経済新報社 | 416p

書影目次
解説 なぜ「両利きの経営」が何よりも重要か(入山章栄)
1.イノベーションという難題
2.探索と深化
3.イノベーションストリームとのバランスを実現させる
4.6つのイノベーションストーリー
5.「正しい」対「ほぼ正しい」
6.両利きの要件とは?
7.要としてのリーダー(および幹部チーム)
8.変革と戦略的刷新をリードする
解説 イノベーションの時代の経営に関する卓越した指南書(冨山和彦)

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