会議室を出て、イノベーションを興せ
「入山教授と考える|AI時代に求められる『動く』経営企画とは」と題するセッションに登壇したのは、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏。モデレーターはログラス 執行役員 CBDOの斉藤知明氏が務めた。

セッションはまず入山氏の講演からスタートした。その冒頭、入山氏は昨今の生成AIの台頭について触れ、「これはとんでもない革命です」と述べた。
入山氏の見立てでは、現在は生成AIの進化の過程における黎明期だ。今後は、特定組織の非公開情報を学習してデータを生成する「プライベートAI」の普及などをきっかけにさらに浸透し、ゆくゆくは企業経営の命運を握るツールになるだろうとした。
そうした大転換のなかで、経営企画の役割には変化が求められる。入山氏は生成AI時代における経営企画の役割を「イノベーションを興すこと」だと断言する。イノベーション理論の草分けであるシュンペーターが「新結合」と述べたとおり、イノベーションは既存の知識やノウハウの組み合わせにより生まれる。既存の要素同士の結合を促すことこそ、新たな時代の経営企画のミッションなのだ。
ただし、その実践には壁も存在する。その壁とは「人間の認知の限界」だと入山氏は説明する。
「人間には認知能力の限界があり、目の前のものばかりに注意が向かいます。しかも日本企業は、新卒一括採用、終身雇用で、何十年も同じ環境に囲まれて過ごすので、既存の要素の組み合わせをやり尽くしている。その状態を脱却するには、自分の今いる場所からできるだけ遠く離れて、いろんなものを見て、いろんな人と話して、新たな知識を持ち帰ってくる必要があります」(入山氏)

では、「知の探索」を実践するには、具体的にどのような行動をとるべきなのか。「経営企画こそ、移動せよ」が入山氏の提案だ。日常の業務では関わりのない現場や触れたことのない業界に足を伸ばし、その場の人々と交流し、情報を交換して、コモディティ化していない希少性の高い知識やノウハウを持ち帰る。そうした行動には無駄やリスクも伴うが、それこそが生成AIには担えない役割なのだという。こうしたなかでは、経営企画はオフィスを離れる機会が急増する。入山氏は「これからの時代は会議室からイノベーションは生まれません」と訴えた。

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