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行動科学で進化するHondaのワイガヤ

“場”をつくるファシリテータが担う役割──イノベーションの種まきによって芽生えた新たな可能性とは?

イノベーション創出プログラム「YG Innovation Facilitator」後編

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 多くの企業でイノベーションを目指して新規事業創出活動が盛んにおこなわれており、そこで活用される多くのアイディア発想フレームワークに関する書籍やワークショップが紹介されています。しかし、アイディアは出ても事業化しないケースをよく耳にします。  私たちHondaでも、2016年から知財部門が中心となってアイディア創出活動を進めてきました。最初はアイディアが事業につながらないという悩みがありましたが、そのブレークスルーとなったのが、Hondaに根付く“ワイガヤ”の仕組みでした。私たちは、従来おこなわれてきた“ワイガヤ”を行動科学で再構築し、アイディア創出プラットフォーム「YG Innovation Facilitator」を開発しました。この新しい“ワイガヤ”である「YG Innovation Facilitator」の概要を前後編で紹介していきます。後編では、このプログラムを円滑に動かす“場”づくりについて解説します。

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“ワイガヤ”を円滑に運営するためのファシリテータ

 従来のHondaのワイガヤでは、ファシリテータは設定していませんでした。その理由はいくつか考えられますが、参加者の中にワイガヤを経験している熟練者が多く、それがOJTとなって、新人が参加しても会議体を運営する力が自然と備わっていったからだと思っています。

 本来のワイガヤを経験した者が少なくなっている現在、これまでのようなOJTを期待しても、必ずしも本来のワイガヤ経験者が参加できるとは限りません。また、参加者の中で本来のワイガヤ経験者が少数だった場合、ワイガヤ経験者に求められる役割が多くなり、本来のアイディア創出自体がおろそかになってしまうことも考えられます。

 そのため、YG Innovation Facilitatorでは、内発的動機付けの醸成に立ち会う専門知識を備えたファシリテータを置くようにしました。

 一般的にファシリテータは、“ファシリテート(促進)する人”と定義されています。実際、アイディア創出のワークショップにおいても、促進する役割が求められます。では“促進”とは何をすれば良いのでしょうか。

 YG Innovation Facilitatorは、行動科学に基づいた理論で構成したプログラムです。ファシリテータについても、行動科学に基づいて定義や役割を定めており、特に短期療法(Brief Therapy)をベースとしたカウンセリング理論を応用しています。

 短期療法(Brief Therapy)とは、米国の精神科医であるミルトン・エリクソンを始祖とするメンタルヘルスのカウンセリング理論です。

 メンタルの不調に対しては、大きく2つのカウンセリングが存在し、1つは不調の原因を明らかにして取り除くよう働きかけるというカウンセリングです。たとえば、不調の原因が職場での人間関係にあると判明した場合は、上司に改善を促したり、異動の検討を依頼したりという対応をします。もう1つが短期療法で、相手がどうなりたいかを重視してその変容に寄り添うカウンセリングです。

 短期療法は未来思考の発想であり、また、比較的短期間でのカウンセリングで終了するという特徴があります。私たちはこの短期療法をアイディア創出におけるワークショップのファシリテートに応用することにしました。

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この記事の著者

仲山 修司(ナカヤマ シュウジ)

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