600名規模・オンラインでの“ワイガヤ”構築
政府が2020年4月7日に発令した緊急事態宣言による外出自粛要請によって、Hondaが予定していた2020年度新入社員600名への対面研修プログラムは、実施困難となりました。そこで、研修プログラムを担っている人事部人材開発課が、オンライン形式で在宅のビデオ会議を可能とする体制を即座に構築し、社内の各部門に対して新たな研修プログラムの手配を行いました。
この新たな研修プログラムの一環として、私たち知的財産・標準化統括部が中心になって展開しているイノベーション創出プログラムであるYGIFチームにも声がかかり、4月15日から5日間にわたるワークショップを急遽企画することになりました。
イノベーション創出プログラムであるYGIFは、本質を議論するHondaの文化である“ワイガヤ”を行動科学で再定義した新事業や新サービスのアイディア創出の仕組みです。理論の概要については、2019年9月に公開した寄稿(前編、後編)でご紹介しておりますので参照いただければ幸いです。
さて、今回のワークショップの企画にあたっては、大きなチャレンジが2点、ありました。1つ目はビデオ会議、そして2つ目は600名という極めて大きな人数規模です。
図1に示すように、YGIFは、行動科学に基づいたワークショップ設計である「体系的枠組み」と行動科学の1つである心理学(カウンセリングスキル)によるファシリテータの介入を特徴としております。
たとえば、参加者12名規模の対面でのワークショップを行う場合は、4人の参加者で1つのグループを作り、グループ毎に1名のファシリテータを配置。さらにファシリテータのスーパーバイザーである上級ファシリテータを1名、そしてワークの説明や進行を行う事務局を1名、という形式を基本としていました。すなわち、12名の参加者に対して5名の運営者が必要となります。
また、ファシリテータについては、“ワイガヤ”ができる安心・安全の場を提供するために、カウンセリングスキルをベースとした“場”への介入を行います。介入は、参加者の言語・非言語で表出する内容、たとえば、雰囲気、話す様子、表情、感情、平等性等を感じ、ファシリテータ自身が安定した状態で行われることが必要です。
このように「対面」で「最大20名程度の小中規模」で実施できるようなワークショップの設計にしていたため、オンラインかつ600人で開催するためには、根本から組み立てなおす必要がありました。