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失敗から学習し、知を蓄積する変革の仕組みと評価──梅澤高明氏と山本康正氏、一條和生氏と松本勝氏が語る

INNOVATION DRIVE 2020セミナーレポート:前編

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 環境変化が大きい現在、イノベーションの必要性は長らく指摘され続けている。しかし現状では、なかなか新しい事業が立ち上がらない。そんななか、12月8日にイノベーション加速体感イベント「INNOVATIONDRIVE 2020」が行われた。  そのイベントから、一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻 専攻長・教授 一條 和生氏のキーノート、一條氏とVISITS Technologies 代表取締役 松本 勝氏の対談と、A.T.カーニー日本法人 会長・CIC Japan 会長 梅澤 高明氏、 DNX Ventures インダストリーパートナー 山本 康正氏が松本氏とともに「イノベーションの鍵はアイデアか、プロセスか」をテーマに行った徹底討論の内容を紹介する。

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登壇者紹介(登壇順に記載)

  • 一條 和生氏(一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻 専攻長・教授)
  • 松本 勝氏(VISITS Technologies 代表取締役)
  • 山本 康正氏(DNX Ventures インダストリーパートナー)
  • 梅澤 高明氏(A.T.カーニー日本法人 会長/CIC Japan 会長)

多くの人が“賛成しない”大切な真実にイノベーションの鍵がある

 イベントは、一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻 専攻長・教授 一條 和生氏のキーノートから始まった。一條氏はキーノート冒頭で、COVID-19によって、計画に基づく未来創造は機能しないことが明らかになり、日本企業がなかなか進められなかったDXに明るい兆しが見えてきたとして、こう語り始めた。

「日本企業は意思決定が遅く、稟議システムは世界的に悪評が高いものでした。また、ブルーカラーの生産性は高いがホワイトカラーの生産性は低い、そんな現実もありました。その状況が、業務のデジタル化によって改善しようとしています」

 ただし、DXが目的化しつつある現場には、一條氏は警鐘を鳴らす。そもそもDXのXの意味するものは「変革」である。平成の時代、日本企業はうまく変革できなかった。1995年は「Fortune 500」にはいる企業が21社あったが、2020年は3社のみになってしまったのである。何がこの低迷の理由だったのだろうか。その理由はすべて、1984年に野中郁次郎氏らが出版した『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』で明らかにされた“日本軍の組織としての問題と一致する”、と一條氏は指摘する。日本軍には、以下のような問題があった。これは、低迷を続ける日本企業にもすべて当てはまる。

  1. トップからの指示が曖昧
  2. 重要なプロジェクトほど責任者不在
  3. 客観的データを「自己都合」で曲解
  4. リーダーの数だけ存在する「方針」
  5. 可能性よりも「前例があるか」を重視
  6. 「原理や論理」よりも「情緒や空気」の支配

 もちろん日本企業も平成の30年間、何もしなかったわけではない。しかしバブルの崩壊もあり日本企業は間違った方向に変革してしまった。変化に適応しようとして、ダイナミックな成長ではなく事業縮小をする方向で、コアコンピタンスを消耗し、手放してしまった。失敗を恐れるあまりベスト・プラクティス偏重に陥って多くのサービスが均質化した。また、異端を嫌い、現状維持を優先する世間におもねるという傾向も強かった。その結果、日本企業はイノベーションを生み出す環境とは真逆の方向に変革が進んでしまったのである。

 では、日本は今後、何を重視して変革すべきなのだろうか。一條氏は、「共感に基づく未来創造」を掲げる。イノベーションは未来創造の営みだ。初めに「こんな未来にしたい」という個人の思い・志があり、それがグループ、組織に共感されることによって新しい商品サービスが生まれ、それに顧客が共感していく。その志の根っこには、「お客様の苦しみを解消したい」という“公共善”としての思いがある。つまり、起点は顧客への共感だ。顧客への共感に始まり、顧客からの共感に終わるのがイノベーションであり、この方向で変革すべきだと一條氏は語る。

 共感の重要性に関しては、キーノートに続く一條氏とVISITS Technologies 代表取締役 松本勝氏の対談のなかでも、強調して語られた。ただし、松本氏は次のように指摘する。

「ピーター・ティールがいうように、顧客が最初から歓迎することはイノベーションではありません。“多くの人が賛成しない大切な真実”に、イノベーションの鍵があります」

 今や時価総額がTOYOTA、GM、VWを合わせた金額を上回るテスラだが、2003年に電気自動車(EV)メーカーとして設立したときには、電気自動車がここまで普及するとは人々は考えていなかったのである。

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