ビッグデータで儲ける3原則
近年注目される、ビッグデータ。データ処理技術の進化がこれまで扱えなかった量のデータ解析を可能にし、新たな傾向の発見や未来予測ができると期待されている。政治やビジネス、ジャーナリズムなどがこぞってビッグデータに取り組んでいるが、社会の注目を浴びるずっと前からこの分野を研究してきた第一人者が、日本にいる。
バズワードとなる前から、ビッグデータという分野そのものを創ってきたと自負しています。
そう語るのは、日立製作所 中央研究所 主管研究長の矢野和男氏。彼らのチームは、MITのアレックス・ペントランド教授やエリック・ブリニョルフソン教授といったビッグデータ研究の権威たちと、10年前から共同研究を行っているのだ。
期待が高まるビッグデータだが、「それをどうやってお金にするのか?」という問い答えられる人は少ないと、矢野氏は言う。「そのためには、データ量や処理速度を上げるだけでは十分ではありません。これまでの発想自体を転換する必要がありました」。長年の研究から、彼らは「ビッグデータで儲ける3原則」を作り上げた。原則では、
- 「何を高めたいか」というアウトカム(業績)
- そのアウトカムに関連するであろうデータの収集
は人間が行った上で、 - コンピュータがアウトカムを高めるための「仮説」を探し出す
従来のデータ分析では、人間が決めた仮説に従ってコンピュータがデータを検証していたが、コンピュータが自ら仮説を作るところが新しい。
言い換えれば、ある「要因X」によって「アウトカムY」が決まるとき、これまでは人間がXを決め、コンピュータがYを最大にするような方程式「Y=f(X)」を解いていた。しかし、そもそも数えきれないほどの要因がビッグデータとして存在するのであれば、コンピュータがそのなかから「Yに最も影響するX」を見つけ出す必要があるという。そうでなければ、ビッグデータを活用したことにはならない。
そうして開発されたXを探すマシンが、「ホームズ」(HOLMES:Hitachi Online Learning Machine for Elastic Society)だ。名前はコナン・ドイルが生み出した名探偵、シャーロック・ホームズに由来している。
これはお店の売上やコストといった業績に影響するマクロな要因と、それに関係するかもしれないさまざまなミクロなデータを入力すると、「どうやったら儲かりますか」ということを教えてくれるマシンです。シャーロック・ホームズが事件の背後で何が起きているかを教えてくれるように、ホームズも儲けの背後で何が起きているかを教えてくれるのです。
ビッグデータを頭脳とするこの名探偵は、すでに多くの現場で儲けの謎を明らかにしているという。