エシカル消費全体に対する認知度、共感度、実践意欲に加え、産業別(全11業種)に見た消費者の意識傾向と期待値、今後の意向・行動を分析。この先、各産業がエシカルなサービス・商品を提供するに当たり、消費者側のボトルネックを解明し、より良い社会の実現に向けた取り組みの支援となることを目指しているという。
本調査から得られた主なファインディングス
- 5割以上が「エシカルな商品・サービスの提供は企業イメージの向上につながる」と思っているが、「エシカル消費」の名称を知っている人は4人に1人。
- 電力・火力・水道のエネルギー業界、金融業界、旅行業界では、現状認識と期待値に差があり、今後の取り組みへの期待が大きい。エネルギー業界では、再生可能エネルギーの消費意向が最も高い結果に。
- 購入経験、消費実施意向とも1位は食品業界。電力・火力・水道業界、家具業界、家電業界は、意向はあるものの購入経験のない消費者が多く、エシカル消費へシフトするきっかけや理由が求められる。
- エシカル消費の中で、人々の認知・共感・実施意向が特に高いのは「食品ロス」「再生可能エネルギー」「地産地消」。
- 消費者のエシカルな商品の購入条件は「価格」と「商品メリット」への納得感。エシカル消費を促進するためには、適正な価格設定と根拠のある説明が有効となる。
- 新型コロナウイルスの影響でエシカル消費をより意識するようになった人は約3割。
各ファインディングスの詳細
1:5割以上が「エシカルな商品・サービスの提供は企業イメージの向上につながる」と思っているが、「エシカル消費」の名称を知っている人は4人に1人。
54.0%が「イメージ向上につながる」と回答。40~59歳女性はイメージ向上につながると回答した割合が最も高く、25~39歳男性は最も低い結果となった。
「エシカル消費」の名称認知率は24.0%。うち「意味まで知っている」は5.7%、「聞いたことがある」は18.3%であった。男女ともにミレニアル・Z世代で比較的高く、16~24歳男性と25~39歳女性が高い一方で、40~59歳男性の認知率が最も低かった。
2:電力・火力・水道のエネルギー業界、金融業界、旅行業界では、現状認識と期待値に差があり、今後の取り組みへの期待が大きい。エネルギー業界では、再生可能エネルギーの消費意向が最も高い結果に。
既にエシカルな取り組みを行っている印象が強い業界上位は、食品38.1%、自動車23.4%、日用品21.3%。一方で、現状の取り組みへの認識と期待値との差が大きく、今後の取り組みへの期待が高い業界は電力・火力・水道、金融、旅行業界だった。
電力・火力・水道のエネルギー業界では、「再生可能エネルギー」29.2%、「CO2排出量の少ないエネルギー」26.2%、「森林保全などの地域保全活動を行う企業のエネルギー」20.3%の順で消費意向が高い。男女ともに60~79歳の関心が高く、男性16~24歳、25~39歳が相対的に低い結果となった。
3:購入経験、購入意向とも1位は食品業界。電力・火力・水道業界、家具業界、家電業界は、意向はあるが購入経験がない消費者が多く、エシカル消費へシフトするきっかけや理由が求められる。
購入経験が多い産業は食品、自動車、日用品業界で、購入意向が高いのは食品、自動車、家電業界であった。また、現状の購入経験と購入意向との差が大きく、今後への期待値が高かった業界は、電力・火力・水道(22.3ポイント)、家具(21.2ポイント)、家電(19.6ポイント)だった。
4:エシカル消費の中で、人々の認知・共感・実施意向が特に高いのは「食品ロス」「再生可能エネルギー」「地産地消」。
エシカル消費に関する取り組み20項目における認知、共感、実施意向の上位は、認知度が「食品ロス防止」44.3%、「再生可能エネルギー」43.0%、共感度が「食品ロス防止」46.6%、「再生可能エネルギー」39.2%、実施意向が「食品ロス防止」36.1%、「地産地消」25.1%となった。
一方で、下位となった項目は、認知度が「ダイベストメント」7.7%、「エシカル金融投資」9.3%、共感度が「ダイベストメント」10.8%、「ベジタリアン・ヴィーガン・ハラル」11.6%、実施意向が「ダイベストメント」3.7%、「ベジタリアン・ヴィーガン・ハラル」4.0%、「エシカル金融投資」4.0%だった。
日頃耳にしたことがある項目は、認知だけでなく共感度も高い一方、聞き慣れない項目は自分ゴト化しにくく、共感・実施意向も低いことがうかがえた。
5:消費者のエシカルな商品の購入条件は「価格」と「商品メリット」への納得感。エシカル消費を促進するためには、適正な価格設定と根拠のある説明が有効。
購入条件は「価格が同じだったら」35.3%、「メリットがわかったら」34.5%、「自分の関心がある問題に関する商品であれば」31.0%、「身近な店で売られていたら」29.1%が上位となった。
購入理由は「同じような商品を買うなら社会貢献につながるものがいい」62.7%、「環境問題や社会問題に関心がある」51.8%、「長い目で見ると節約につながるから」40.2%が上位だった。
購入しない理由は、「エシカル消費についてよくわからない」28.3%、「どれがエシカル消費につながるのかわからない」23.4%が上位となり、エシカルな商品やサービスへの購入意向を高めるためには適切な説明を行い、価格面でも納得感が求められていることがうかがえた。
6:新型コロナウイルスの影響でエシカル消費をより意識するようになった人は約3割。
新型コロナウイルス対策の自粛期間によって30.9%がエシカル消費に対して「意識が高まった」と回答。一方で、実際に行動に移している人は6.5%にとどまった。
具体的な行動としては、「無駄な消費をしない/消費を抑える」が6.2%、「環境に良いことを考える/環境を配慮した行動をする」が6.0%、「食品ロスを減らす/食品を無駄なく使い切る」が5.7%と上位となった。また、「節約志向になった」「地産地消を意識する/地元の消費を増やした」という回答も得られた。