CPSで最も重要なのは「ビジネスモデル」
多くの日本企業がDXに取り組んでいるが、そもそもDXの定義が不明確で無理な計画を立ててしまう場合が多い。
そこで、東芝ではDXを3段階で行っていると島田氏は話す。
- DXとは何かを定義する「理解」
- 実際に取り組んでみる「試行」
- 本格的に実行に移す「展開」
東芝は現在3つ目の「展開」に入りつつある。
CPS(サイバーフィジカルシステムズ)で最も重要なことはビジネスモデルだ。それは必ずしもソフトウェアを使ったものでなくても構わないという。最新のDXは「プラットフォーム型」と定義されている。これは、顧客をマネーサイドとサブサイドに分けて、それをマルチサイドでマッチングするという方法だ。いわゆる“グーグルモデル”で、同社がGoogle マップを無料で配ってサブサイドの顧客にサービスを提供し、そこから得たデータを元に、異なる顧客=マネーサイドで儲けるという手法を指す。
一方、通常のデジタル化による進化を東芝ではDE(デジタルエボリューション)と呼んでいる。これは、バリューチェーン内のデジタル化で、自分の仕事の範囲を再定義することだという。バリューチェーン内でデジタル化を行うと、効率化されて収益が小さくなるため、自分の仕事の範囲を広げなければ、デジタル化で収益を高めることはできない。そこで、島田氏は「ハードを売るな、サービスを売ろう。」と社内で呼びかけている。
さらに島田氏は、プラットフォーム型DXについて詳しく説明した。ウェブのリンクを可視化すると、カオスのような状態になっているが、これは人間の世界にも当てはまるという。私たちはつい樹形図という思考の枠組みで組織を整理したくなるが、実際の人間の世界は整然とした形にはならないのだ。
1998年に、ネットワークを研究していた理論物理学者のバラバーシ・アルベルト・ラースロー氏は、ウェブの地図の作製を試みた。当初は、大多数のノード(ネットワークの構成要素)が持つリンク(繋がり)の数がほぼ同じ範囲に収まるランダムネットワークになると予想していたが、結果は多くのリンクを持つ少数のウェブサイトと、ほとんどリンクを持たない大多数で形成される「スケールフリーネットワーク」であることがわかった。