SXSWeduに6000人が集まる教育イノベーション先進国アメリカ
前回の記事後半で少しお伝えしたSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)というテキサス州・オースティンで開催されるカンファレンス。その教育セクションであるSXSWeduに今年も参加してきました。今回はそのカンファレンスで考えたことを中心に、お伝えしていきます。
SXSWは開始当初は音楽祭のみでしたが、映画、インタラクティブ(テクノロジー)というジャンルが加わり、現在はこの三本柱をテーマ領域としています。10日間で数万人がオースティンに集まる、世界最大級のイベントです。オースティンは、「シリコンヒルズ」と呼ばれていて、カリフォルニアのシリコンバレー、ニューヨークのシリコンアレーに並ぶ、ベンチャー育成が盛んな都市でもあります。オースティン・コンベンション・センターを中心に街全体が会場になり、セミナー、パネルセッション、展示会、ピッチ、そして1000組以上のライブなどがおこなわれています。
私は3年前から毎年、SXSWeduに参加しています。非常に多くのスピーチやセッションが同時刻におこなわれます。ですので、本コラムで紹介するのは、あくまで私が独断と偏見で選んだものであることをご容赦ください。
教育イノベーションの祭典SXSWedu
SXSWeduの参加者はおよそ6000人で、男女比は5:5、7割が大学院卒という高学歴層が集まっています。それは教育関係者、教師が多いことも関係しているでしょう。毎年、大会場ではティーチ・フォー・アメリカ創設者のウェンディ・コップや、ビデオゲームの父と呼ばれているノーラン・ブッシュネル、15歳でカーボンナノチューブを使ったすい臓がんの発見ツールを開発したジャック・アンドレイカ、そしてビル・ゲイツなど、教育に関係、関心のある著名人がスピーチをします。
今年は、MITメディアラボ所長の伊藤穰一さんの妹さんで、教育科学の博士でもあるMimi Ito(伊藤瑞子)さんが、コネクテッドラーニングをテーマにお話されていました。今の若い世代は、インターネットを使って人とつながるのが当たり前になっています。この状態を否定するのではなく、引き出される学習者の興味と仲間意識をよい学習機会ととらえ、学びを設計するということを提唱されていました。
また、ネットを通じて誰でも無償で高水準の教育が受けられるカーンアカデミーの創設者、サルマン・カーンの発表も盛況でした。カーンアカデミーでは今後、カレッジボードというSAT(現在アメリカ国内で一番広く大学受験に使われているテスト)を提供しているNPOと提携し、一切学校に通わずともSATで留学の資格をとって大学に入学・留学を可能にすると言っています。これは、旧来の教育の仕組みが根底から覆されるようなインパクトがある取り組みだと思います。