チームの力 : 成功はつながりの産物
私が偉そうに紹介していますが、実際ハードワークでiPSを作ってくれたのは、3人を中心とする私の研究室の若いメンバーであります。この3人がiPS細胞の立役者なのです。
こう語る山中氏は、発表の際は研究初期メンバー、そして共同研究者の高橋和利氏の名前をかならず挙げ、チームとしての力を強調する。そしてiPS細胞が、先行するES細胞の研究者の成果の上に成り立っていることも。 イノベーションとは、未踏の領域の達成であるが、それは単独で成立するものではなく、それまでの達成の綜合(シンセシス)の上に成り立つ。そのための環境づくりが、京都大学のiPS細胞研究所(CiRA:サイラ)だという。 CiRAのAはアプリケーション(応用)であり、山中氏にとって、「再生医療」と「創薬」というアプリケーションこそが、最大の目標なのだという。
再生医療分野では、効果と安全性を確かめる臨床研究が先頭を走っている。 また、薬の開発では、認知症の主要原因であるアルツハイマー病などに対して、従来の創薬は、共通の薬の投与が中心だったが、iPS細胞の研究によって、パーソナルな薬の個別投与が可能になるという。