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Agentic AI同士が交渉し、新たな経済圏を創る──NECが描くAIの進化と日本企業の勝ち筋とは

ゲスト:日本電気株式会社 森永聡氏、千葉雄樹氏

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 AIは「ツール」から自律的にタスクを実行する「エージェント」へと進化しつつある。このエージェント同士が企業の枠を超えて連携し、商談や取引を行う「経済圏」が生まれようとしている。NECはこれを「X-as-an-Agent (XaaA) 経済圏」と名付け、中核技術として「自動交渉AI」の研究開発をリードしている。本取材では、Agentic AI技術研究の第一人者であるNEC 上席主席研究員の森永聡氏、同社で生成AI事業開発を率いる千葉雄樹氏に、d-strategy 代表取締役CEOの小宮昌人氏がインタビュー。Agentic AIが拓くビジネスの未来、自動交渉AI技術がもたらす価値、そして日本企業がこの新たな経済圏で勝ち抜くために準備すべきことについて聞いた。

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Agentic AIは「交渉」し、「経済圏」を創る

小宮昌人氏(以下、小宮):Agentic AIの未来について伺います。まず、NECが提唱する「X-as-an-Agent」のコンセプトをお聞かせください。

森永聡氏(以下、森永):「XaaS(X as a Service)」は一般的になりましたが、これからは「X-as-an-Agent」の世界が来ると考えます。これはNECのビジョンで、新たな経済圏が生まれるとの予測です。

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 少々前までの「Agentic AI」は、われわれが「フェーズ1」と呼ぶ「ツール」段階です。AIやデータ分析がエージェントの体裁を取り、専門家でなくてもAIを部下や代理人のように使えます。

 現在は「フェーズ2」に来ています。これは、一企業内で複数のエージェントが協調して動作する世界です。「生産管理エージェント」が「需要予測エージェント」などと自動で情報をやり取りし、連携してタスクを実行します。これはマルチエージェントシステムと呼ばれ、これに対応できないITベンダーは淘汰(とうた)されるでしょう。この段階は「パートナー」としてのAgentic AIです。

小宮:AIの進化は「ツール」から「パートナー」、そして「経済主体」へと、NECでは予測されていますね。フェーズ2が「パートナー」なら、次は何ですか。

森永:われわれが本命と捉えるのが「フェーズ3」です。別々の企業のエージェント同士が、企業の枠を超えてコミュニケーションし、仕事を果たす世界です。

 典型例は「物の売買」で、A社の「販売エージェント」とB社の「購買エージェント」が、納期、数量、価格等を自律的に合意します。これがフェーズ3です。

小宮:それが「経済主体」としてのAI、「X-as-an-Agent経済圏」ですね。

森永:われわれはこの経済圏を「エージェントの、エージェントによる、エージェントのためのビジネス」が回るエコシステムと定義しています。

 「エージェントのビジネス」はエージェント自体の売買・派遣、「エージェントによるビジネス」はエージェントによる経済活動、「エージェントのためのビジネス」はエージェント向け実行基盤や保証サービスを指します。

 Gartnerは、Agentic AIによる経済活動が2030年までに数兆ドル規模になると予測[1]しており、われわれも同様の見通しです。

森永聡
日本電気株式会社 研究開発部門 上席主席研究員 森永聡(もりなが・さとし)氏
博士(工学)。1994年NEC入社。金融庁出向(銀行のリスク規制制度設計担当)などを経て、機械学習・データマイニング研究チームのリーダーとして従事。現在は、Agentic AIが経済活動を行う「X-as-an-Agent 経済圏」を提唱し、その中核技術としての「自動交渉AI」の研究開発と社会実装をリード。「自律調整SCMコンソーシアム」理事長、産業技術総合研究所 NEC-産総研AI連携研究室 副連携研究室長、神戸大学客員教授、日本人工知能学会理事なども務める。

[1]Don Scheibenreif, Mark Raskino 『When Machines Become Customers: Ready or not, AI enabled non-human customers are coming to your business. How you adapt will make or break your future.』(2023,Gartner)

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なぜ「データ共有」ではなく「自動交渉AI」なのか

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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