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パナソニックが成熟市場で挑んだ、バケツリレー型商品開発からの脱却 縦割り組織から越境行動を生むには?

ゲスト:パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 谷口旭氏/パナソニック マーケティング ジャパン株式会社・首都圏社 北村洋平氏

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 パナソニックは、2021年10月より「マイクロエンタープライズ(ME)制」という大胆な組織変革に乗り出した。ME制とは、職能横断型の少人数チームが、あたかも一つの「小さな会社」のように、商品企画から製造、販売、収益責任までを一貫して担う仕組みである。しかしここで重要なのは、制度そのものにとどまらず、お客さま起点で意思決定し、必要なら職能の境界を越えて動く“行動変化”を生み出すことである。そのため、企画・技術・デザイン・製造・マーケティングなど多様な職能が最初期から議論し、全体最適で判断できるよう“フロントローディング”している。本稿では、ME制の制度設計から携わった事務局リーダーの谷口旭氏、実際にプロジェクトリーダーとして変革を体現した北村洋平氏、そして社外から事務局に伴走支援を行う古澤恵太氏による鼎談の模様をお届けする。なぜパナソニックは変わろうとしたのか。現場では何が起きているのか。スチームオーブンレンジ ビストロの開発の裏側など具体的な事例を交えながら、その全貌に迫る。

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「バケツリレー型」開発の限界と「ME制」の誕生

古澤恵太氏(以下、古澤):多くの大企業が「部門を越えた連携」や「新規事業の創出」に課題を抱える中、パナソニックが実践している「ME(マイクロエンタープライズ)制」は、非常に示唆に富んだ取り組みだと思います。まずは、この制度が生まれた背景について教えていただけますか。

谷口旭氏(以下、谷口):背景には、我々が長年抱えてきた組織構造上の課題がありました。

 当社のような大規模な製造業では、効率化の追求によって企画、技術、デザイン、製造、マーケティング、販売といった各機能が高度に専門化し、それぞれの工程は最適化される一方で“全体のつながり”が見えにくくなる構造的課題が生まれていました。それぞれの役割を果たすことには長けていますが、工程ごとに仕事を受け渡していく、いわゆる「バケツリレー型」の業務プロセスが主流になっていたのです。

 このバケツリレー型では、各部門が自分の工程の最適化に集中してしまうため、お客さまとの距離が遠くなり、「手触り感のある顧客理解」が希薄になるという弊害が生まれていました。これは単なる「縦割り」の問題ではなく、構造・行動・前提となるマインドセットが相互に影響し合って発生する構造的な課題でした。

 「お客さまに本当に愛される商品を作りたい」と思っても、組織の壁が阻害要因となり、熱意が減衰してしまう。この構造を変え、そうした閉塞感を打破し、少人数の横断チームに権限を移譲して、スピード感を持って価値を創出するために導入されたのが自律分散型の「ME制」です。

谷口旭
パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 くらしプロダクトイノベーション本部 課長 谷口旭氏
2007年キャリア入社後、薄型テレビの開発を担当。2016年に開始の同社新規事業公募「Game Changer Catapult」1期生として事業創出に携わる。その後R&D部門の企画担当を経て、ME制の制度設計と運営を担う。特定非営利活動法人人間中心設計推進機構 認定 人間中心設計専門家。

北村洋平氏(以下、北村):現場の視点からも補足しますと、市場環境の変化も大きな要因でした。家電製品のコモディティ化が急激に進み、単なるスペック競争や機能の積み上げだけでは、お客さまに選ばれ続けることが難しくなっています。

 「この商品は誰のどんな課題を解決するのか」という本質に立ち返るためには、開発の初期段階からマーケティングや販売の視点を入れる必要がありました。しかし、従来の縦割り組織ではそれが難しかったのです。

北村洋平
パナソニック マーケティング ジャパン株式会社・首都圏社 常務 北村洋平氏
2000年、パナソニック(当時、松下電器産業株式会社)入社。以来、家電事業に関わる中、日本向け/海外向けマーケティング、生活研究、商品企画、事業企画、幹部スタッフを経験し、販売会社出向に至る。現在は、社外との協業構築と、社員育成に勤しむ。

古澤:経営層からのトップダウンというよりは、現場の危機感と経営の課題認識が合致して生まれた制度なのですね。

谷口:そうですね。ME制は、単なるプロジェクトチームではなく、社内に擬似的な「小さな会社(マイクロエンタープライズ)」を作る取り組みですが、本質はそこに留まりません。

 テーマごとに立ち上がるMEチームには、商品企画、技術、デザイン、製造、マーケティング、品質保証(品証)など、多様な職能を持つメンバーが最初期から部門を越えて集結します。それぞれの視点が早い段階で交わることで、コンセプトから販売まで一貫したストーリーで進められるようになります。そして、そのリーダーは「事業責任者」として、企画から販売、そして最終的なP/L(損益)責任までを担います。

 制度としての枠組み以上に、チーム・メンバーのふるまいが変わることを重視した設計になっています。

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「作って終わり」ではない。販売まで責任を持つ覚悟

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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