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注目の経営書の著者と語る

Airbnbやメルカリに見るイノベーションの正体「価値移転」──外部不経済を考慮した事業の可能性とは

ゲスト:グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター 野本遼平氏

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 「イノベーションはゼロから生み出されるもの」という考え方が、新規事業開発の現場で前提になりすぎてはいないだろうか。弁護士、事業会社でのM&AやPMI(買収後統合)、そしてベンチャーキャピタリストという稀有なキャリアを歩んできた野本遼平氏は、最新刊『ゼロから創らない戦略』において、利益の源泉は「価値の移転」にあると説く。既存のエコシステムから別の場所へとリソースを運び、価値認識のギャップを突くことで生まれる利潤。そのメカニズムと、表裏一体となって現れる「外部不経済」という副作用。AIやロボティクスといったテクノロジーが「取引コスト」を劇的に下げる今、ビジネスパーソンが持つべき新たな視点とは。Biz/Zine編集部の栗原茂が、野本氏の思考の深淵に迫った。

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弁護士、事業開発、VCを経てたどり着いた「資本主義への違和感」

Biz/Zine編集部・栗原(以下、栗原):野本さんは弁護士からキャリアをスタートし、事業会社での買収・PMI、そして現在はベンチャーキャピタル(VC)でのスタートアップ投資と、非常に多層的な経験をされています。なぜ今、このタイミングで『ゼロから創らない戦略』を執筆されたのでしょうか。

野本遼平(以下、野本):私はこれまで一貫して「事業をどう作り、どう伸ばすか」に向き合ってきました。VCになってはじめて「金融」の立場から視点を持つことになったのですが、その中で、ある矛盾に突き当たったんです。「社会的に価値があり、切実な課題を解決している事業であるにもかかわらず、資本主義的には評価されにくいものが少なくありません。一方、外部不経済(著作権問題、プライバシー問題や格差拡大など)を引き起こしている巨大テック企業は莫大な利益を得ている」という現実です。

 この資本主義の「構造的な歪み」とも言える違和感をどう整理すべきか。その答えを求めて、資本主義論や経済学などのアカデミックな知見と、日々の実務での気づきを融合させた結果、たどり着いたのが「価値移転」というフレームワークでした。

野本遼平
グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター 野本 遼平(のもと・りょうへい)氏
慶應義塾大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修了。2012年司法試験合格。弁護士として実務に従事した後、KDDIグループのSupershipホールディングスにて経営戦略策定やM&A、PMIを主導。2019年よりグロービス・キャピタル・パートナーズにて、スタートアップへの投資および投資先企業の支援を行う。経済産業省・特許庁のガイドライン検討委員や東京大学大学院工学系研究科の非常勤講師なども歴任。著書に『ゼロから創らない戦略』(日本経済新聞出版)、『成功するアライアンス 戦略と実務』など多数。

栗原:実務家である野本さんが、あえて骨太な理論をベースに書かれた点に、これまでのビジネス書とは異なる説得力を感じます。

野本:ありがとうございます。実務も踏まえつつも、単なるハウツー本ではなく、資本やイノベーションの「構造」を現代的に再解釈したかったのです。本書は、混沌とした新規事業の現場に一本の補助線を引くための試みでもあります。

イノベーションでは“巨人の肩の上”に立て

栗原:新規事業の現場では、しばしば「素晴らしい技術さえあれば売れる」という誤解がありますが、野本さんは「発明(インベンション)」と「イノベーション」をどう切り分けていますか。

野本:ここは明確に分けるべきです。発明された技術そのものが、社会的・経済的に価値を持つかは別問題です。時間軸が異なると表現したほうが正確かもしれません。技術の練度が高まり、それが広く社会実装され、人々の行動を変えるのが「イノベーション」です。

 資本主義のメカニズム上、利益は「何を生み出したか」よりも「どう価値を移転させ、社会を変化させたか」に強く紐付いているのです。「巨人の肩の上」に立ち、既存のリソースをどう再定義するかが重要になります。

ゼロから創らない戦略 イノベーションを駆動する「価値移転」の法則
野本遼平『ゼロから創らない戦略 イノベーションを駆動する「価値移転」の法則』(日経BP 日本経済新聞出版、2026年1月)

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イノベーションの原則「価値移転」を理解せよ

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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