法人応用脳科学コンソーシアム(以下、CAN)は、2022年5月11日(水)に開催された2022年度のキックオフシンポジウムにて、脳科学の産業応用に関する今年度の新たな取り組みを発表した。
- 新しい4つのプラットフォームの開始
- 2つの研究会の開催
これらの取り組みを通して、脳の健康、脳の創造力をパワーアップし、ビジネスパーソンが自らの仕事において、脳を知り、脳に聞き、脳を満足させる取り組みが可能になるよう支援を行うことで、CANでは脳科学の産業応用を加速させていきたいと、述べている。
開始する4つのプラットフォーム
1:Neuro Startup-topia
ブレインテックの市場規模は2024年には約5兆円の市場に成長すると言われている。また、Neurotech AnalysisがまとめたNeurotech Landscape Overview2020レポートによれば、世界のニューロテックスタートアップTOP200の大半は米国であり、米国の121社に対して日本はわずか1社。
日本には脳科学分野において優秀な若手研究者多数いるにもかかわらず、自ら事業化に取り組むためのハードルが高いといった現状を鑑み、このたびブレインテックの産業化をミッションにしたブレインテックコンソーシアムと共同で、「Brain-Tech & Applied Neuroscience Start-up Encouragement Network(BASE Net)」を設置。BASE ハッカソンを開催し、スタートアップを目指す若手研究者の支援に取り組む。
2:Brain Childcare-topia
玉川大学脳科学研究所の赤ちゃんラボと浜松医科大学/子どものこころの発達研究センターと連携し、主に子育て中のビジネスパーソンやその支援者を対象に、第一線で活躍している講師陣が子育てに役立つ知識を通勤時間帯に視聴できるように、1講義10~20分程度の動画をコンパクトにまとめて提供する。
3:Daily Lifelog Info-topia
日常生活下での心理的ストレスや疲労状態を心理データ、生理データ、行動データ等として計測するとともに、その低減に向けた介入方法の定量的効果測定を実施するためのプラットフォームを構築。CAN主催で実施される研究会や会員等で活用できるようにする(有料)。
4:Neuro Info-topia
CANで配信する脳科学関連(研究、テクノロジー、サービス等)のニュース、CANアカデミー講師を中心とした国内脳科学関連の研究機関や研究者の情報等を一元管理できるようにし、CANのホームページから検索可能にする(無料)。
新たに開催する2つの研究会
1:Well-living for Well-being研究会
Well-beingに対する社会的ニーズの急速な高まりとデジタルヘルス技術開発の加速と市場拡大がグローバルで進展。また、ISO規格として「健康経営・Well-being Management System Standard」の制定に向けた活動が行われている。この健康経営で着目されているアブセンティーズム・プレゼンティーズム等の主要要因は脳機能と密接に関連していることに加え、新型コロナ禍が継続的に続く中、日常生活の変化によるストレス増加、治療後に生じているブレインフォグやロングコビッド症候群等、脳の健康を脅かす環境が増加しているという。このような背景のもと、唯一の情報処理臓器とも言われる脳の機能に着目し、脳科学、心理学等の研究者と「脳の健康」に関心の高い会員企業が共同で、世界に遅れることなく技術開発を促進し社会実装を目指す研究会を組成する。
具体的には、世界的および日本でも約20%の人が有病者とも言われる慢性疼痛について、Oxford大研究者や国内研究者、そして会員企業と共同で低減システムの研究開発を行う予定。また、ポジティブサイコロジーを利用したストレス緩和手法、脳波計を使わないα波変動検知によるストレス計測手法等の研究開発等を実施する予定だという。
2:脳から考える次世代情報空間研究会
VR、メタバースは世界中で多額の投資を集め、開発競争が過熱している。とりわけメタバース・バブルの発生で、マネーロンダリング、SEX産業等が出現して一部無法地帯化しているともいわれているという。その一方で、ビジネスにおける有効性・課題および活用の在り方について、これらの技術が人間の認知・意思決定・生理状態等に与えるポジティブ、ネガティブな影響等を考慮したうえで検討できているとは言い難い状況だとした。本研究会では、脳科学、心理学、VR研究者等と会員企業が共同で、人間の認知・意思決定・生理状態等の知見に基づいた、人間のポジティブ状態のエンハンスメント、ネガティブ状態のリリースに活用する情報空間であり、現実空間における一人ひとりの人間のWell-beingの向上に資する次世代の情報空間環境、そしてビジネスの創出を目指す。