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BASF、食糧安全保障を支える農業イノベーションについて10年間の見通しを発表

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 BASFは、気候や環境への影響を最小限にしながら次世代の食料安全保障を支える農業イノベーションについて、10年間の見通しを発表した。

 同社は現在、小麦、キャノーラ、大豆、トウモロコシ、綿、米、果物、野菜など主要作物における農業成果の向上に取り組んでいるという。こうした主要作物において、種子や形質、種子処理、生物学的・化学的作物保護のパイプライン、およびデジタルファーミングソリューションにおいてイノベーションを起こし、様々な事業分野で、主要となるパイプラインプロジェクトを次の10年で立ち上げる予定だとしている。

 同社は、イノベーションパイプラインの価値について、ピーク時の売上高は75億ユーロにのぼる見通しだと述べている。

欧州でハイブリッド小麦「Ideltis(アイデルティス)」、作物保護、デジタルツールを組み合わせ、生物多様性を保全

 同社によれば、増加する世界人口のニーズに応えるには、小麦生産者は今後20年間で、毎年1.7%ずつ収量を増やす必要があるという。

 これに対し、農業成果とサステナビリティを最適化する製品、サービスの組み合わせを研究することで、収量増加に貢献。2020年代後半には、ハイブリッド小麦「Idelti」の発売を予定しているという。この小麦を生産するにあたっては、「xarvio Digital Farming Solutions(ザルビオ デジタル ファーミングソリューションズ)」を活用した、ゾーンごとの圃場データ分析による最適な播種の推奨や、「Revysol(レヴィソル)」殺菌剤、「Axalion(アクサリオン)」殺虫剤、「Luximo(ラクシモ)」除草剤などの作物保護イノベーションによる、適切な散布がサポートされると述べている。

 Revysolで収量を増加させることで、必要な土地面積を4%減らすことができるほか、生産者は殺菌剤の散布量を削減し、CO2排出量を削減することができるとしている。

中南米の生産者に合わせた大豆イノベーションパイプラインで、精密散布と効率的な土地利用を実現

 中南米の生産者のニーズに合わせて、種子、農薬、デジタルソリューションの分野でイノベーションを進め、組み合わせている。具体的には、アジア型ダイズさび病など大豆の病害の効果的な防除や抵抗性の管理に有効な、Revysolやゼミウムベースの新しい混合剤の開発を進めており、2020年代半ばには生産者に提供する予定だという。

 また、約30%の収量損失をもたらす害虫である、センチュウに対する耐性を持つ新規形質も開発中であり、大豆生産者をサポートするとしている。

 なお、除草剤を正確に散布するために、同社はBosch(ボッシュ)と共同で、xarvioの農学インテリジェンスとBoschのハイテクカメラセンサー技術、およびソフトウェアを組み合わせて、スマートスプレーソリューションを開発。雑草の識別と防除をリアルタイム、かつ自動で行えるという。

 また、スマートスプレーソリューションは、特別に開発された除草剤フォーミュレーションと最適な散布量によって、必要な時に必要な場所にのみ除草剤を散布でき、雑草抵抗性のリスクを低減するとしている。加えて、スポット散布により、圃場の状況や発生している雑草の量に応じて、除草剤の使用量を最大70%削減できると述べている。このスマートスプレーソリューションを、今後18ヵ月以内にブラジル、北米、欧州で上市する予定だという。

生産者の気候変動レジリエンスを強化する、北米のキャノーラ生産のイノベーション

 厳しい環境における生産者のレジリエンスを高めるため、キャノーラにおいて包括的なポートフォリオを提供するためのイノベーションに取り組んでいるという。具体的には、雑種強勢によるキャノーラ製品「InVigor(インビガー)」の改良を続ける一方、乾燥と高温化が進むカナダと米国における歴史的に生産性の低い農地での栽培を実現するために、黄色い種子を持つキャノーラのハイブリッド種を開発。除草剤耐性があることが特徴で、これを2020年代半ばに圃場に導入する予定だとしている。このように形質と遺伝子を組み合わせることで、生産者は干ばつや熱ストレスなどの条件下でも、高価値の油脂作物を生産できるようになると述べている。

 また、新しい種子処理剤「Vercoras(バーコラス)」によって種子を広域スペクトルで保護し、根朽病などの種子・土壌伝染性の病害や、ノミハムシによる被害から種子を守るほか、自動デジタル作物最適化ツール「xarvio FIELD MANAGER(ザルビオ フィールドマネージャー)」により、気象データやシーズン中の病害をはじめとするリスクなど、様々な農学的情報を組み合わせて分析を行うため、播種から収穫まで圃場の保護に役立つとしている。加えて、データに基づき、いつ、どこで、どれだけの農薬散布を行うべきかなどの情報を提案するという。

アジアの水稲生産で気候変動対応ソリューションを活用し、CO2排出量を削減

 稲作におけるCO2排出量と水使用量を削減するために、水稲の代替となる直播栽培用のコメ生産ハイブリッドシステムで使用できる、除草剤に耐性を持つ形質を2種類提供する予定だという。この形質を稲に組み込み、補完の除草剤をシステムとして組み合わせることで、品質低下につながる雑草を防除でき、直播栽培での排出量削減が実現するとしている。なお、アジア太平洋地域については、「Clearfield(クリアフィールド)」コメ生産システムがすでに発売されており、「Provisia(プロビジア)」コメ生産システムは2020年代半ばに発売を予定しているという。

 これを同社のデジタルソリューションと組み合わせると、コメ生産者は生産物1トンあたり最大50%のCO2排出量を削減できると述べている。

野菜種子と生物学的作物保護におけるイノベーションで、地元の屋内栽培をサポート

 屋内での栽培向けに種子や農薬を最適化しており、2021年には「Nunhems(ナンナムズ)」ブランドで販売している野菜種子事業で、野菜種子の品種改良のための最新式温室を新たに開設。屋内栽培技術によって、水、エネルギーなどの物資を節約できるという。また、同栽培技術と、条件に合わせて特別に育種されたBASFの野菜種子品種を組み合わせる予定だとしている。同社はこのような温室を利用して、トマト、キュウリ、ピーマン、レタスなどの果菜類を、年間を通じて効率良く生産・収穫するための基礎研究を進めていると述べている。

 なお、野菜種子イノベーションのパートナーとしては、バイオ殺虫剤「Velifer(ベリファー)」や「バイオ殺菌剤Serifel(サリフェル)」など同社のバイオソリューションが、温室環境で性能を発揮するように最適化されており、今後数年間で、EU、中国、中南米など、世界各地で順次発売される予定だという。

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