イノベーションスタジオ福岡流、固定観念を壊し“オーナーシップ”を育む文化

Re:public(リ・パブリック)田村大さん、内田友紀さん インタビュー 中編

 都市のイノベーションのあり方を、研究し、実践するRe:public(リ・パブリック)の田村大さんと内田友紀さんに、都市におけるイノベーションの本質を聞く本連載。彼らが取り組む「イノベーションスタジオ福岡」は市民が次々とイノベーターになり、今までにない価値観で新しいものやサービスを生み出し、社会や生活をより良い方向に変えようとする取り組みだ。そのプロジェクトとは、具体的にどういうものなのだろうか。

[公開日]

[語り手] 田村 大 内田 友紀 [取材・構成] 石川 伸明 [編] BizZine編集部

[タグ] 事業開発 社会・公共 イノベーション・スタジオ福岡

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「市民」と「ソートリーダー」による、イノベーションの仕組みづくり

――「イノベーション・スタジオ福岡」がスタートしたのは、いつからですか。

田村:
 2013年の秋にパイロットプロジェクトとして「プロジェクト0」を行い、以後、5ヶ月ごとにプロジェクトを実施し、今は「プロジェクト3」が始まっているところです。プロジェクトには毎回、公募した市民が40人、企業から10人~20人、計50人~60人が参加しています。

内田:
 2014年度は「健康社会の創造」を掲げ、プロジェクト1「日常の中のスポーツのデザイン」、プロジェクト2「ライフコースのイノベーション」というように毎回テーマを決めています。また、その分野で活躍している方たちにアドバイザーとして協力してもらっています。

――5ヶ月間のプロジェクトは、具体的にはどのように進められるのでしょうか。

内田:
 プロジェクトは3つのフェーズに分かれています。フェーズ1は「フィールドリサーチ」。参加メンバーそれぞれが、コミットしていきたい本質的な課題にたどり着く期間です。
 まずは参加者全員が互いの関心を持ち寄り、1チーム5〜6人で、10チーム前後に分かれます。プロジェクト毎に「ライフコース」などのテーマを掲げていても、高齢者のことなのか、キャリアシフトするワーカー世代なのか、家族の話なのか…。参加メンバーは異なる関心を持っているので、まず自身の中核に据える課題を研ぎすまします。
 チームごとで課題に対する仮説を持ったのち、フィールドリサーチに入ります。リサーチすることで、各自が持っていた仮説がひっくり返ることが多く、課題を乗り越える新たな切り口が獲得され、アイデアコンセプトが見えてきます。このフェーズに比重を置いていることが、イノベーションスタジオのひとつの特徴です。

 フェーズ2「プロトタイプ&テスト」では、フェーズ1で生まれたアイデアコンセプトを基に、事業のプロトタイピングを行い、テストを繰り返すことでアイデアを形にしていきます。事業化に向けて加速し、走り始める期間です。

田村:
 そして、フェーズ3「スケールアップ&スケールアウト」では、事業の種が出来上がった時に、その種をどうブラッシュアップすればいいかアドバイスしてくれたり、パートナーになりうる人達と繋げてくれたりするような方々が待ち構えていて、事業の実現に向けて走りだすための期間、場所となります。

タイトル© 福岡地域戦略推進協議会

――アドバイザーは、どういう役割を果たしているのですか。

内田:
 3回のワークショップに参加して、参加メンバーたちの固定観念を壊す役割を果たしてくださいます。各チームのディスカッションに口を突っ込み、「こういう観点が必要なんじゃないの」「私は、こんなことやってきたけど、こうやって失敗したよ」と、フラットな立場でアドバイスしながら、各チームに関わっていきます。

田村:
 自分の哲学やアイデアを表明してリーダーシップをとっていく人のことをビジネスの世界では「ソートリーダー(実践的先駆者)」と呼びますが、彼らはまさにその役割です。プロジェクトの参加メンバーに伴走し、寄り添いながら、ご自身の経験からアドバイスもしますし、そのチームとの議論が白熱してくると、ソートリーダーもメンバーとして加わることもあります。参加メンバーにとっては、”ななめ上の関係”といえます。
 それから、フェーズ1と2が終わった後、チームを組み替えています。

――同じメンバーで最後までやらないのは、なぜですか。

内田:
 フェーズ1は本質的な課題を見つける期間なので、例えば高齢社会に関心がある人でも、高齢者自身へのサービスを作りたい人と、ケアする人に対してサービスを作りたい人など、いろんな人がチーム内に混ざっています。それで、フェーズごとに自分が何にコミットしたいのかを確認して、チームを作り直すんですね。また、フェーズ2は事業化に向けて本格的に走り出す期間でもあります。オーナーシップの高いチームを作るためにも、この機会を設けています。

タイトル©Yuiko Nagai

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