中外製薬と日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は、デジタルプラント実現に向け、新しい生産オペレーションを支えるデジタル基盤を構築。中外製薬のグループ会社である中外製薬工業の浮間工場で稼働させたことを発表した。
同デジタル基盤は、教育系システム、計画系システム、遠隔支援システムの3つのシステムから構成されている。これらのシステム群や既存の社内システムはデータ基盤を介して連携し、効率的な生産・要員計画および進捗管理や現場のリモート支援に活用されるという。
両社は、生産性向上、信頼性向上、働き方の変革を目指した「人に着目したデジタル基盤」の構築を通じ、システム開発にあわせて業務プロセスを変革したと述べている。
デジタル化を通じた新しいオペレーションにより、DI(Data Integrity)対応を含めた医薬品製造に関する規制へのコンプライアンスを高めると同時に、生産計画や業務アサインの全体最適化、見える化が期待されるという。また、製造ラインを越えた組織横断的な働き方が可能となることで、個々人の経験やスキル向上などの人材育成にも寄与するとしている。加えて、作業の確認や支援がリモートでできるようになることで、場所を選ばない柔軟な働き方を実現することが期待されている。
中外製薬の上席執行役員 デジタルトランスフォーメーションユニット長である志済 聡子氏は、「デジタルプラントの実現は、CHUGAI DIGITAL VISION 2030に掲げる 『すべてのバリューチェーンの効率化』の一環として目指すものです。新しいオペレーションを支えるデジタル基盤の構築は、デジタルプラント実現の第一段階であり、システム開発の枠を超え、既存の業務プロセスの在り方を見直すことが重要でした。日本IBMの豊富な経験と多様なソリューションにより、無事稼働に至ったことを大変嬉しく思います」と述べている。
また、中外製薬の執行役員 生産技術本部長で、中外製薬工業の社長である田熊 晋也氏は、「生産機能のソフト面の業務をDX(デジタルトランスフォーメーション)により大きく変革するデジタルプラントは、中外製薬の目指すトップイノベーターに相応しい生産機能を実現するために不可欠です。DXを通じ、生産性の向上に加え、作業の信頼性向上や新しい働き方の実現も図ることで、生産機能の価値創造型組織への転換を一層推進してまいります」と述べている。
今後は、デジタルプラント実現の第二段階として、本デジタル基盤の他工場への展開も進めるという。宇都宮工場では2023年中、藤枝工場では2024年中の稼働を目指すとしている。また、今後の三工場における展開を踏まえ、デジタル基盤の高度化や追加施策にも取り組んでいくと述べている。