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ローランド・ベルガー Diversityプロジェクト

【哲学者マルクス・ガブリエル特別対談】日本の組織と多様性

ローランド・ベルガー Diversityプロジェクト vol.1

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マルクス・ガブリエル
ボン大学教授、哲学者 マルクス・ガブリエル(Markus Gabriel)氏
「世界で最も注目を浴びる天才哲学者」と評される。ボン大学国際哲学センター所長。1980年生まれ。史上最年少の29歳で200年以上の伝統を誇るボン大学の哲学科・正教授に抜擢される。西洋哲学の伝統に根ざしつつ「新しい実在論」を提唱して世界的に注目される。著書『なぜ世界は存在しないのか』は世界中でベストセラーとなった。NHK・Eテレ『欲望の時代の哲学』等への出演も話題に。

大橋譲
ローランド・ベルガー 日本代表 大橋譲氏
カリフォルニア大学サンディエゴ校情報工学部卒業。日本ヒューレットパッカード、サピエントを経てローランド・ベルガーに参画。米系戦略コンサルティング・ファームを経て現職。製造業・ハイテク、石油・化学、IT企業等、幅広いクライアントに対して、欧米文化と日本の文化を交えた企業改革や事業再生、クロスボーダーを伴う成長戦略や企業買収の検討・統合など異文化が大きな壁となる様々な経営課題の解決で多くの支援実績を有する。

アイデンティティと多様性の関係

Identity and Diversity

大橋:ガブリエルさん、今日は宜しくお願いします。私はローランド・ベルガーの日本の代表をしていますが、ローランド・ベルガーには多様性を重んじるカルチャーがあり、日本オフィスにもその文化が根付いています。ただ、日本社会全体として多様性についてもっと議論をして、考えを深める必要があると感じています。今日は、そんな議論の場にしていけたらと思っています。

ガブリエル:ローランド・ベルガーはドイツの会社なので、よく知っていますよ。私自身は日本にも関心があるので、日本オフィスの大橋さんとお話できるのを楽しみにしていました。今日は宜しくお願いします。

大橋譲

大橋:多様性に関してガブリエルさんと話したかった理由のひとつは、僕自身が多様性の狭間で生きてきたからです。私は小さい頃からアメリカで育ったので、自分がアメリカ人なのか日本人なのか、自分自身のアイデンティティの解釈に悩んだ時期がありました。他人から様々なステレオタイプに分類されることに違和感を持っていました。日本人やアメリカ人というような分類ではなく、私は私なのですが。

ガブリエル:アイデンティティという言葉が出てきましたが、哲学の観点から述べられることがあります。哲学の分野において、人間は「自己解釈する動物」です。例えば、私が身長180cmであるという事実に解釈の余地はありませんが、私が教授や哲学者であるということは、解釈の対象となります。自分で自分は哲学者だと考えているからこそ、私は哲学者なのです。そして、その具体的な解釈の一つひとつがアイデンティティとなります。

 「何をもって日本人とするか」という解釈の仕方も一人ひとり違います。“日本人”という単一の何かがあるというのはフィクションであり、実際には存在しません。あるのは日本の社会や経済、国家のみです。それなのに、そこに参加している誰もが「日本人である」という包括的なアイデンティティが存在すると錯覚し、それに応じて行動をしています。本来人間は自由で多様な考えをもつ動物であるはずなのに、アイデンティティという人間の解釈によって生まれる様々なステレオタイプがあることで、多様性が阻害されていると思います。

マルクス・ガブリエル

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