日本電気(以下、NEC)と筑波大学は、疾患や体調の変化などにより皮膚組織に水分がたまる症状である浮腫(むくみ)の度合いを、AIを活用して顔映像から推定する技術を開発した。
浮腫は、腎疾患や心疾患、肝疾患など様々な原因で生じるといい、透析患者は従来、浮腫の簡易計測手段として体重計を用いている。今回開発した技術を検証した結果、体重測定による計測を代替できる精度であることを確認したという。
同技術は、スマートフォンやタブレット端末のカメラで撮影した顔映像で推定ができるため、外出先や車いすの利用者でも負荷なく利用でき、場所や環境の制限を受けずにデータの取得が可能。これにより、食事や排泄による浮腫度合いの経時変化の分析などが可能になるとしている。
技術の特徴は以下のとおり。
AIで推定モデルを作成し少量の患者個人の顔映像で推定可能
複数の患者の顔映像を用いて顔に表出する様々な浮腫の情報を抽出するAIモデルを事前に学習し、浮腫と相関のある体重を教師データとして用いることで、浮腫の有無や度合いを高精度に事前学習する方式を開発。この事前学習したAIモデルをベースにすることで、利用する患者のデータが少量でも、その患者の浮腫に合わせたAIモデルを転移学習し、推定精度を高めることが可能だという。
顔認証技術を応用した浮腫推定
顔映像のみで浮腫の有無や度合いを推定でき、顔の検出には、NECの顔認証技術を応用し、迅速かつ正確な検出を実現。通常のカメラ映像で推定できるため、スマートフォンやタブレット端末が利用でき、高い利便性が得られるとしている。
NECと筑波大学は今後も、同技術向上のためデータ集積を図るとともに、医療介護・ヘルスケア分野での具体的応用に関して探索。また、NECでは2024年度の実用化を目指すという。